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JFA技術委員長 反町康治さんに聞いた「全少を通して伝えたいコト」

昨年行われた「JFA 第44回全日本U-12サッカー選手権」を視察された、日本サッカー協会(JFA)の技術委員長を務める反町康治さん。そこで反町さんに、この大会の意義や試合を見て感じたこと、また本大会を通して子どもたちやサカママ、指導者に伝えたいことをお聞きしました。

一人ひとりの技術レベルが高く、アイデアを持ってプレー

昨年、鹿児島で行われた「JFA 第44回全日本U-12サッカー選手権」に足を運びました。コロナ禍で、しかも決勝は関東チームの対戦でしたが、地元の方も大勢応援に来ていただき、それだけ注目されている大会だと実感しました。

本大会は、「全日本少年サッカー大会」という名だったことから、今でも「全少」と呼んでいるチームや指導者の方も多いのではないでしょうか。1977年の第1回からずっと夏に開催していたのを、2015年から冬場、鹿児島へと移行。2011年から、11人制が8人制になりました。試合に出られる選手は減ったものの、一人ひとりがボールに触れる回数やシュートチャンスに関わることなどが増えたと思います。

準々決勝、準決勝、決勝を視察して感じたのは、もはや子どものサッカーでないということです。チームそれぞれに色があり、一人ひとりの技術のレベルは高く、ゴールキーパーも攻撃の起点となり、フィールドプレーヤーのようにゲームの組み立てに関わっていました。

サッカーをやる中で感じる1つ目の喜びは技術の習得、2つ目は相手との駆け引きやアイデアを持ってプレーできることだと思います。全国大会まで勝ち上がってきたチームだけあり、選手たちはみなそれらが身に付いていて、攻守に渡り、アイデアを持ってプレーできているとも感じました。

サッカーはエモーショナルなスポーツ。勝利に対する感情が大事

昨年の大会はPK戦の末、FCトリアネーロ町田(東京都)が初優勝。準優勝に終わったジェフユナイテッド千葉U-12(千葉県)の選手たちはみな泣いていました。私は彼らに向けてスピーチを行ったのですが、「準優勝のチームにもあえて、おめでとうと言いたい」と伝えたのです。なぜなら、優勝には届かなくとも、たくさんのものを得て、それは必ず成長につながるからです。

サッカーはエモーショナル(感情的)なスポーツでもあります。勝ったことを大いに喜び、負けたことを悔しく思う、勝利に対するその感情が大事なのです。悔しい気持ちが、もっと上手くなろう、もっと強くなろうという次へのエネルギーになることは間違いありません。小学生年代にエモーショナルな部分を兼ね備えていれば、中学生、高校生になるにつれ「もっともっと上に行きたい」「最終的には日の丸をつけてやりたい」といった気持ちも芽生えてくるでしょう。

私が勝利したチームに対してよく口にするのは、「勝負には、勝ち負け、引き分けの3つしかない。今、勝って喜んでいるかもしれないけれど、相手のことも考えなければいけない」ということです。それは、相手に対してのリスペクトでもあるからです。また、浮かれることなく、精進していかなければいけないという意味も込めています。

 

都道府県大会に出た選手は最高峰のレベルを知っておくこと

本大会は、子どもたちのサッカーに対するモチベーションを上げ、気づきを与える大会でもあります。出場する子どもたちは、ここで満足することなく、上には上がいることを感じてもらい、中学へと進んでほしいと思います。また、全国大会に出ることができなかった子どもたちも、都道府県大会では戦って いるので、この大会に出ていたと自負していいと思います。だからこそ、決勝戦を見て、今年の最高峰のレベルを知っておくことが大事です。そうすれば目標がわかり、次のステップにも進みやすくなるでしょう。また、5年生も、この大会を見てレベルを知れば、もっと頑張ろうという気持ちになるはずです。現地に行けなくても、準決勝や決勝はテレビで放送されるので、ぜひ見てほしいと思います。

実は私自身、小学6年生の時に、本大会の前身である全国サッカースポーツ少年団大会に静岡県代表として出場し、優勝したんです。この大会に出たことが、日本代表にもなることができた私のサッカー人生の出発点になったとも言えるのです。誰しもサッカーの入口は必ずあり、指導者、親などの影響を受けながら成長していきます。この大会が、子どもたちがサッカーをずっと続けていく一つのきっかけになればと思います。

 

反町さんからアドバイス

サッカージュニアへ

技術習得のために真似から始めてもいい、サッカーを諦めずに続けて欲しい

小学生のうちは、昨日できなかったことが、今日できるようになることもあります。だからこそ、技術の習得に向いている年代なのです。右利きの選手も、左足の練習を重ねれば上手くなるはずです。私自身、子どもの頃に左足の練習をずっとしていたことで、左右の足で蹴れるようになりました。技術を習得するために、模倣から始めてもかまいません。憧れの選手をみつけて、真似をしてみるのもいい練習になるのです。また、フットサルは、足の裏でボールをコントロールする機会が増えるので、技術の幅を広げるために体験しておくのもいいでしょう。サッカーを諦めずに続け、楽しさを感じながら、成長してもらえたらと思います。

サカママへ

子どもが試合から帰ったら「今日は楽しかった?」と声かけを!

自分の子どもが一番だと思っているのは、お母さんのいい部分ではあると思います。でも、子どもに過度な期待を与えてしまうと、プレーや精神面に大きく影響してしまうのです。「子どもが好きなサッカーをいかに楽しく続けさせることができるか」を大前提に考えて、サポートしてもらえればと思います。また、サッカーは、試合の勝ち負けだけでなく、子ども自身がエンジョイすることも大事です。ですので、親御さんは子どもが試合から帰ってきたら「今日は勝った?」ではなく、「今日は楽しかった?」と聞いてあげてください。

指導者へ

真剣勝負とサッカーをエンジョイできる環境を上手くコントロールして欲しい

小学生は、性格も含め多様ですので、それを見極めて伴った指導が大事です。プロになった選手たちも、小学生時代の指導者のことは必ず覚えています。それだけ、この年代にとって指導者との関わりは大切なのです。子どもたちは、勝利にこだわるから上手くなっていくのですが、真剣勝負とサッカーをエンジョイできる環境、この2つを上手くコントロールして指導してもらえればと思います。また、練習では、試合形式を増やし、できるだけ多くボールに触らせることが重要です。東京五輪の代表選手を見ると、U-15で代表になっていた選手はわずか2名程です。子どもたちはどう成長していくかわからないので、コツコツと人材を育成してほしいと思います。

JFA 第45回全日本U-12サッカー選手権大会
TV放送をチェック!

  • 準決勝 2021年12月28日(火)
    放送日時:2022年1月9日(日)15:00~17:00
    放送局:CS放送 日テレジータス
  • 決勝 2021年12月29日(水)
    《録画中継》
    放送日時:2021年12月29日(水)10:30~11:25
    放送局:地上波 日本テレビ系31局ネット
    《フルマッチ》
    放送日時:2022年1月9日(日)17:00~18:15
    放送局:CS放送 日テレジータス

写真/野口岳彦