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知らないと損する!?「ルール改正」で覚えておくべき6つの基準 #3

IFAB(国際サッカー評議会)から2019-20年のサッカー競技規則改正が通達され、国内ではJ1リーグで8月2日から、地域別に段階的に新ルールが適用されている。「プレーイングタイムの確保、選手間のマナー、リスぺクトの向上」などを目的とした今回のルール改正により、選手たちが覚えておくべきポイントは!?
1993年のJリーグ開幕節で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎氏に、特筆すべき変更ポイントをピックアップし、解説をいただいた。覚えておくべき6つの基準を3回に分けて紹介する。

★前回紹介した変更点は…「交代時は近くの境界線から」「ドロップボールの変更」

変更5:ハンド基準の具体化

ハンド基準の具体化

「第12条 ファウルと不正行為」におけるハンドについて、大幅な追加事項がありました。判断基準がより具体的になり、「❶反則」「❷通常は反則」「❸通常は反則でない」が設けられました。代表的な変更ポイントを解説していきます。

ここがポイント!

 判定に関しては主審に任せるしかありませんが、知らないと損する部分を紹介します。❶について、攻撃、守備側の考え方が変更されました。以前は攻撃、守備とも平等な基準で判断してきましたが、今回の改正で攻撃側のハンドをより厳しくとることになりました。例え偶発的であっても手、腕からゴールにつながる機会を作り出した場合は反則となります。
 ❷について、手や腕の『位置』が、判断基準として重要視されるようになりました。従来ルールの基準だった不可避かどうかの「スピード」の基準はなくなり、手や腕を用いて不自然に大きくする、手・腕が肩の位置より上の高さにある場合は、“通常は”反則となります。
 選手が注意すべき場面としては、どうしても腕が上がってしまうヘディングの競り合い、スライディングにて地面に手をつく反対の手が上がってしまう場面などでしょうか。具体化されたとはいえ、最終的には主審の判断となりますが、不用意にハンドの対象とならないよう気を付けながらプレーしましょう。

変更6:PKに関する変更

PKに関する変更

PKにおいて、GKに大きな自由(制約の緩和)ができました。従来ルールではキックの時、GKは両足をゴールラインに置く必要がありましたが、新ルールでは片足だけライン上にあれば良く、それが空中であってもライン上であればよしとされました。また、GKがインプレーになる前に前方に飛び出しても、それが直接の影響でなくゴールを外れた場合は、蹴り直さなくても良いことになりました。

ここがポイント!

 GKに自由が与えられことにより、審判員はより厳格に見ることになります。インプレ―前の前方への飛び出しは従来の“暗黙の了解”を排除し、VARを使用した試合ではより正確で厳しい判定が下されています。逆にGKの影響なくゴールを外れたキックのリスタートなしは、サッカー競技の“精神”によるものであり、ゲームがスピーディに、お互いがストレスなくできるようにする改正です。

総括「ルールがあってスポーツは成り立つ」

ルールがあってスポーツは成り立つ

「今回のルール改正は、従来よりプレーイングタイムを確保することが根底にあります。試合が止められないことで、選手は隙をつかれないために休む暇もありませんし、次のプレーに対して警戒しなくてはいけません。試合がよりスピーディになることで、サッカーという競技がよりエキサイティングで魅力的なものになる改正だと思っています。
 VARの導入など、判断基準が具体的になり、審判員の手助けにもなっているでしょう。ただ、私はスポーツとしてどうなのか、という思いが少しあります。公平性は向上しているのかもしれませんが、スポーツは不自由さを越えていくことに意味があると思っています。直面する矛盾に、努力をして乗り越える尊さも大事にしてほしい。
 選手たちは今回の改正を機に、さらに競技規則の精神の理解を深めてほしいです」