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指導者の言霊「米澤一成 京都橘高校サッカー部監督」

指導者の言霊「米澤一成 京都橘高校サッカー部監督」

ジュニアの指導は、年代で区切って考える

ジュニア年代は6年間と幅広いので、2つ、3つと年代で区切って考えてもいいかと思います。低学年は、本当にサッカーの入口ですので、まずはサッカーを楽しむところを主にし、高学年では個人的なスキルを上げることや協調性を持ってサッカーをするよう指導していけばいいのではないでしょうか。

高校生を見て感じるのは、ジュニア、ジュニアユース時代に、環境のいい中でサッカーを経験してきた選手というのは、与えられたことを実行する力はついているものの、クリエイティブにいろいろ作り出す力は、どうしても弱いように感じます。とはいえ、ジュニア年代の選手に、判断するための材料をほとんど与えずに"自分で考えろ"といった指導をしてしまうと、選手たちはどう考えていいのかわからないものです。ですので、いろいろなモデルケースをみせながら、ジャッジの仕方を教えていくことが重要だと思います。

子どもたちといえどレベルの差はあることから、試合になかなか出られず、辞めてしまいたいと思う選手もいるでしょう。その子にとって、本当にサッカーが弊害になっているのなら仕方ないのですが、ちょっとしたことで挫折するということが癖にならないためにも、親御さんは子どものわかる言葉で「もう一回トライしてみよう」ということを話してほしいと思います。また、指導者は、きちんとその状況を把握し、チームメイトの大切さを今一度、説いてほしいのです。そのことがチームのことを考える機会にもなり、よりよいチームになる可能性もあるからです。

この年代の指導者には、年齢の高い方がいてもいいと思っています。年齢を重ねているからこそ、ゆとりをもって選手を見れるだろうし、偏った指導にもならないと思うからです。また、低学年はどうしても飽きるのが早いのですが、そういった方なら、これまでの経験から、いろいろな手法を知っているため、子どもたちを飽きさせずに指導できるはずです。ユースやトップでの指導経験がある、保護者の方より年齢の上の方たちがジュニア年代を指導してくれたなら、よりジュニアサッカーの環境がよくなるような気がしています。

サッカーが好きという気持ちで次の年代へ送りだしてほしい

ジュニア年代は、勝つことの喜びだけでなく、負けることの悔しさも味わうことで、いい選手に育っていくのです。また、保護者の方は、もう少し与えることを抑えて、適度な距離感を持ってもらったほうが、今後よりいい選手に育っていくように感じています。そして何より、選手たちがサッカーが好きという気持ちを抱いたまま、次の年代へ送りだしてほしいと思うのです。なぜなら、サッカーに対する情熱があれば、次の3年間で、たとえ色々なことが起こっても潰れないでしょうし、何よりも伸びる可能性があるからです。年代にもよりますが、"サッカーが好き"という気持ちをより育むためには、指導者自身が学び、トライし続けているという姿勢を選手にみせることも大事なのではないでしょうか。

ユース年代は「育成と強化」のバランスを大切に指導

ユース年代を指導するうえで大事にしているのは「育成と強化」のバランスです。この年代は、ある程度大人のサッカーをしなければいけないですし、完成形でもあると思う反面、たとえ今、結果がでなくても、大学に行ってから活躍しプロを目指すという選手もでてくるからです。今の年代で結果がでていないから駄目というのではなく、その次で活躍できればいい、まだチャンスはあるんだと、選手に諦めさせないような指導を心がけています。とはいえ、選手を一人前の大人、社会人にしなければいけない側面もあるので、時には選手が抱いている夢に区切りをつけなければいけないとも思っています。

私の指導信条は「組織の中で個を生かす」。チームという組織の中で、個を生かすにはどうすべきか、それを常に考えて指導にあたっています。