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子どもがサッカー観戦に集中できる時間は15分が限界ってホント?! 親子でサッカー観戦を楽しむヒント

子どもがサッカー観戦に集中できる時間は15分が限界ってホント?! 親子でサッカー観戦を楽しむヒント

サカママ読者の皆さま、初めまして。この度、新しくサカママライターを務めることになりました、まりこと申します。中学1年生と小学3年生のサッカー兄弟がいて、サカママ歴は今年で12年目に入ります。

私自身、中学時代はハンドボール部、高校時代はバレーボール部と、とにかくボールを使った団体スポーツが心底大好きでした。そのせいか、サッカーをする我が子たちに対しても、つい熱血モードになる時が…

ただ、そんな時に私をクールダウンさせてくれるものがあります。それは「心理学の知識」です。心理の専門家として小中学校でスクールカウンセラーのお仕事をしてきた経験が、我が子と向き合う時の大きな支えとなっています。サカママが味わう喜怒哀楽を、たまに専門知識も織り交ぜながら皆さんと共有できたらと思っています。これからどうぞよろしくお願いします。

国立競技場でのサッカー観戦! 小学3年生の集中力は何分続くのか⁈

毎年成人の日に国立競技場で行われる全国高校サッカー選手権の決勝。連日テレビで放送されていた熱戦を見ていたら、決勝戦は現地で観戦したい! と思い立ち、急遽2日前にチケットを購入しました。9歳の次男は久々のスタジアムでの試合観戦。今回は、その時に感じた「子どもの試合を見る集中力」について書きたいと思います。

サッカー観戦が大好きでずっと見ていられる! というお子さんももちろんいると思いますが、うちの次男はサッカーの試合をあまり見ません。観戦したとしても、集中力が続かないことが多いです。試合を90分間通して観戦したことは過去一度もありませんでした。そんな次男の様子に、(もっと集中できないのかな~。一緒にサッカーの試合を見て楽しみたいのにな~)と内心不満を感じていました。

でも、ここでハッと思い直します。子どもの集中力ってそもそもどのくらい持続するものなのか? いろいろな説がありますが、ある書籍によると、未就学児~小学校低学年の場合は「年齢+1分」程度であり、高学年でも「15分」程だと言われています※1

つまり、9歳の平均的な集中力の持続時間を考えてみれば、90分間は集中できないほうが一般的なのです。

「大人と同じ水準で考えない!」
「自分の理想を押し付けない!」
スクールカウンセラーとして親御さんたちに投げかけてきた言葉が、ブーメランになって自分に戻ってくる気分です。本来サッカースタジアムは、サッカーにあまり興味のない人でも誰でも楽しめる場所だと思います。試合に集中しなくても、子どもには現地の雰囲気を感じてもらえればそれで充分! 生で決勝戦を見たいと思ったのは私! そう気持ちを整えて、いざ国立競技場へ!

 

意外にも90分間試合にのめり込んで熱中した次男! その要因とは?

国立競技場は5万人を超える観客で埋め尽くされており、高校サッカーの人気を肌で感じました。試合前に生歌で披露されるテーマソング、迫力のある両校の応援合戦など、プロの試合とは異なる独特の雰囲気に、次男は興味津々でした。あっという間に惹き込まれて、いざ試合が始まると、なんと前後半90分集中して試合を観戦することができたのです!

もちろん、サッカー少年であれば低学年のうちから集中して試合を見る子もいると思いますが、次男にとっては目覚ましい成長でした。特に前半は、「たぶんあの選手はこう思ったから今のプレイを選択した」「自分だったら今の場面はこうする」などと、解説しながら熱心に見ていました。

ところどころはもう私が聞いても理解できないような解説もあり、次男の頭の中に描かれているプレイイメージの成長に驚かされました。こうして、親子で大満足の試合観戦となったのですが、いったい何が次男の集中力をつなぎとめてくれたのか⁈ 集中が続いた要因を振り返ってみました。

ある論文で、「集中力の根源は意欲である」と説明していました※2。では、「意欲」自体は、何によって生まれるのか? 今回に関して言えば、3つの要素によって次男の「意欲→集中力」の法則が生まれていたように思います。

①スタジアムの雰囲気が最高だった

満員に近い観客がいる国立競技場の雰囲気は素晴らしく、選手たちの一つひとつのプレイに会場全体が湧き立っていました。その雰囲気が少年のココロをグッと掴んだのだと思います。サッカーがいかに人々を魅了するスポーツなのかということを、改めて感じました。

②自分事に置き換えられるようになった

9歳になり、自分のポジションの選手の動きを見て「自分だったら」と想像できる力が発達してきたようです。これが大きな「意欲→集中力」に繋がっていました。自分の同じ背番号の選手をお気に入りの選手として注目するなどの工夫もしていました。

③コンディションが整っていた

1月の試合観戦はやはり寒いです! 寒いと試合を見る意欲はどうしても削がれ、集中もしにくいです。だから、防寒対策はバッチリしていきました。カイロや衣類で暖かくして、体をさすってあげたりしました。あと、温かい飲み物を持っていき、それをところどころで飲ませてあげることもしました。

実際、コップ1杯の水を飲むだけでも、集中力が回復するとのデータもあるようです。ちなみに、ハーフタイムにトイレに行くなどして体を動かしたことも、プラスに働いたと思います。これは、軽く体を動かした後は集中力が高まるという多くの研究結果によって裏付けされている話です※3

こうして、予想外に集中力を発揮してくれた次男のおかげで、高校生たちの最後のワンプレイまで、親子で試合を堪能することができました。

 

子どもにとって「サッカー観戦=とにかく楽しい」がまず大事!

試合後は、同じく観戦に来ていると判明したチームメイトと合流。三度の飯より友達と遊びたい次男は大興奮。友達と大はしゃぎする様子を見て、友達と一緒に観戦したら、今日みたいな集中力は発揮されないんだろうなぁと感じました。でも、そうやって友達との交流をメインで楽しむ試合観戦だって当然ありですよね。

まず大切なのは、サッカーの試合観戦は楽しい! スタジアムって、ワクワクする楽しいモノがあふれている最高の場所だ! 子どもがそう感じてくれることなんだと思います。「もっと集中して試合を見なさい!」とか「今のプレイちゃんとみた?」といった親の熱血教育モードの声掛けは不要です。次は大好きなチームメイトたちと一緒にスタジアムに行って、みんなで盛り上がるサッカー観戦がしたいなと思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました!

 


【参考文献】
※1 加藤紀子 『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』
※2 森敏昭 「注意力・集中力の発達」 児童心理 52 巻 5 号 pp. 457 - 462
※3 池野尚美 「授業前のちょっとした運動が、子どもたちの集中力に及ぼす効果について」

WRITER PROFILE

まりこ
まりこ

臨床心理士/公認心理師/食育指導士
13歳と9歳のサッカー兄弟のサカママ。サカママ歴12年。
長男はおっとりマイペースに地域の街クラブでサッカーを楽しみ、次男は強烈な負けず嫌いを活かし強豪クラブで切磋琢磨。心理の専門知識が役立った経験を踏まえ、実体験や失敗も絡めながら情報を発信していきたいと思います。