「全国都道府県対抗 eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」大井川和彦茨城県知事 インタビュー
国体の文化プログラムとして採用されたeスポーツ。この画期的な活動を先頭に立って推し進めるのが大井川和彦茨城県知事だ。前職ではニコニコ動画を運営する株式会社ドワンゴでネットの高校=N高等学校の設立にも携わった同氏が考える、eスポーツの価値とは?
茨城県知事
大井川 和彦 KAZUHIKO OIGAWA
1964年4月3日生まれ。茨城県土浦市出身。
株式会社ドワンゴ取締役を経て、2017年9月に茨城県知事に。
ぜひサッカー部のみなさんにも挑戦してほしい
国体に合わせてeスポーツ大会開催に至った経緯と意図について教えてください。
国体をより盛り上げ、みなさんに認知していただくために活動していた中で、茨城県のスタッフから老若男女問わず参加できる『eスポーツ』のアイデアが出されました。私も以前はゲームイベント『闘会議』など、ゲーム業界にも深く関わるドワンゴという会社におりましたので『ぜひやろう』と。さまざまな意見が交わされましたが、日本スポーツ協会からもご理解をいただき、国体の文化プログラムとして第一回大会を開催する運びとなりました
日本サッカー協会(JFA)との協力関係はいかがですか?
全国で各都道府県のサッカー協会に協力いただき予選が開催されています。JFA の方からは、サッカーという競技の振興としてもeスポーツは非常に大きな役割を果たしていて、新しい刺激になるんじゃないかと後押しをいただいております。世の趨勢がデジタルへと移行していくなかで、伝統スポーツが良い意味で変わるきっかけになればと思っています
県の代表として試合ができることは、プレーヤーの大きなモチベーションとなりそうですね。
eスポーツが日本で広く知られることになったのはジャカルタ・アジア大会での金メダル獲得でしょう。優勝した日本代表の杉村直紀選手(近畿大学・当時)、相原翼選手(N高等学校・当時)は、ニュースでも大々的に報道されました。県の代表や、国を代表するナショナルチームというものは、通常の大会とは違った意味合いが出てきます。地域の代表ということで応援してくれる人もでてくるで
しょう。eスポーツとして初めて全国都道府県で予選を行い、日本一を決める大会となりますから、大いに盛り上がることを期待しています
今大会は、オープンの部だけでなく、少年の部として高校年代を対象としたカテゴリーが採用されています。若年層のeスポーツの普及は、増え続ける不登校問題の解消としての期待もあるようですね。
私は高校に行かないことが否定的に見られる風潮、既成概念そのものがどんどん変わって行くと思っています。ネットを通じて一人のプロフェッショナルの講義を多数の生徒が受けるなど、教育の形も変わってきています。部活の考え方も、みんなで集まって行うものから、普段はネットを通じて活動し、たまにリアルで会う、といった構図に転換するかもしれません。勉強もスポーツも、家を出なくても行える時代が来る可能性は高いと思っています
肯定的な意見がある反面、eスポーツはスポーツではない、といった意見も聞かれます。
あらゆる事象において、新しいものは拒絶される側面があります。ゲームには“ゲーム依存”、“ゲーム中毒”といったマイナス面もありますし、逆にプラスになる面も見ていかなくてはいけません。大切なのは多様であることを肯定的に捉えることです。自分がどうしたいか、あるがままの自分を肯定的に見ていけることが大事なんだと思います。最新の科学や医学など、様々な分野の課題の解決にゲームが取り入れられていると聞きます。eスポーツも新しいエンターテインメントとして、世界中でいろいろな年代が参加できるようになってきています。これは茨城県だけでなく、日本として時代の流れを取り入れていく必要があると思います。今回の取り組みはその意味では非常に大きなターニングポイントとなるのではないでしょうか
すでに各地でエントリー、予選が始まっていますが、どんな高校生に参加してほしいですか?
予選を含めて、参加者の規模は今までにないものを目指しています。ぜひサッカー部のみなさんにも参加してほしいですね! 現実のサッカーの戦術を知っていることは、『ウイニングイレブン』において非常に重要らしいです。現役Jリーガーにもゲームファンが多く、相当上手いと聞いています。ゲームを使いながら実際にスポーツの戦術を考えることもあれば、その逆もあるかもしれません。これからの体育会系の部活とeスポーツの融合の可能性は大いにあると思っています。予選参加がまだ間に合う地域の方には、チームをつくってぜひ参加してほしいですね! 大会を一緒になって盛り上げましょう