株式会社Jリーグマーケティング代表取締役社長窪田慎二インタビュー
eスポーツが盛り上がりを見せた2018年、いち早くこのジャンルに名乗りを挙げたのがJリーグだ。昨年は「明治安田生命eJリーグ」を開催し、今年はモバイルフォンゲーム『ウイニングイレブン 2019』で、J1、J2の全40クラブを対象としたeスポーツ大会を行う。国内最高峰のプロリーグが考えるeスポーツの取り組みとは?
株式会社Jリーグマーケティング代表取締役社長
窪田 慎二 SHINJI KUBOTA
1969年6月6日生まれ。埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。
2017年4月(株)Jリーグマーケティング代表取締役社長就任。
活躍できる舞台を用意していきたい
国内でeスポーツが注目されるようになった昨年、スポーツ界でいち早く手を挙げたのがJリーグだった印象があります。
まず、Jリーグマーケティングという会社は2017年4月の組織再編により誕生した会社で、ECサイトなどグッズ関連を扱うマーチャンダイジング事業、ライセンスを扱うライツ事業があり、その中にあるゲームライセンス事業としてeスポーツに取り組んでいます。昨年は、『FIFAシリーズ』を展開するEA(エレクトロニック・アーツ)さんから、既存のeスポーツ大会を『FIFA eワールドカップ』という名称に改め、より大規模な大会を行うので、その日本予選をJリーグとして取り組めないかとお話しをいただきました。『ワールドカップと聞いたら出るしかないよね?』と(笑)、かなり早い段階から取り組んだのは事実ですね
実際に大会開催を経ての成果はいかがでしたか?
まず『eスポーツとは何ですか?』という関係者が多い中、我々としても、それで何を得られるのか分からない状況でした。『明治安田生命eJリーグ』の名で大会を開催させていただきましたが、我々のパートナーのみなさまに対しても、Jリーグとして新しい価値を付与することはできないかと考え、まずは『やってみよう』と。我々には自分たちで映像を作ってDAZN(ダゾーン)などで配信する制作体制ができていましたので、大会の模様を色々なメディアで配信し、どのような人が見ているのかを知る必要もありました。そもそも日本にはどんな選手がいて、どこまで世界に通用するものなのか。すべてが手探りのスタートでしたが、結果、延べ約90万人の視聴をいただき、我々が目指している若年層へのアプローチもできたかと思います。今年の秋には通信システムが5Gとなり処理速度が上がることで、さまざまな試みが可能になると言われていますし、次のステップに向かう貴重な材料となりました
今年は新しいプロジェクト「eJリーグウイニングイレブン 2019シーズン」が行われていますね。
KONAMIさんと新設した大会で、『ウイニングイレブン』のモバイルゲームを対象とした新しい試みとなります。スマートフォンを使用し、誰でも参加できるので、より広い層の方に楽しんでいただければと思います。J1、J2の全40クラブから好きなチームを選択し、勝ち進めばそのクラブの代表として参加できる斬新な大会システムとなっています。我々としても新しいムーブメントを起こせるのではないかと期待しております
Jクラブのeスポーツに対する取り組みも活発ですね。
そうですね。湘南ベルマーレはJリーグの開幕戦でeスポーツ事業参入を発表していましたし、早くから部門を立ち上げている東京ヴェルディ、横浜F・マリノスなどはeスポーツチームを結成し、積極的にプロリーグに参戦しています。この流れは今後も増加していくのではないでしょうか
大会が盛況をみせる一方、eスポーツはスポーツではない、という意見も存在します。
eスポーツにはシューティングやシミュレーション、カードゲームなど数多くの対象タイトルがあります。その中で我々はサッカーを扱ったゲームをeスポーツと捉えてやっていこうと思っています。そうすれば『eスポーツはスポーツなのか?』と聞かれてもはっきりスポーツだと答えられます。また、私はサッカーで得られる経験を、eスポーツプレーヤーも同様に得られると考えています。コミュニケーションを取ること、協調すること、相手をリスペクトすること、仲間と一緒になって目標に取り組むこと、そして試合を通して課題や問題点を見つけ修正していく作業は、サッカーも、eスポーツのサッカーも変わらないはずです。そして、それらの経験は、子どもの気付きや成長に寄与するものと思っています
Jリーグがeスポーツに取り込むことで、双方にとっての相乗効果も期待できそうですね。
eスポーツで興味を持ち、Jリーグの会場に足を運ぶ人が出てくるかもしれませんし、その逆もあるでしょう。VR技術の発達により、ゲームが実際の選手と同じ視点で試合に入っていくようなものになれば、サッカーの上達にもつながるでしょう。性別、人種、国境を越えて参加できるのがeスポーツです。間口が広がることは日本サッカーの発展にもつながります。我々としてもさまざまなプレーヤーが活躍できる舞台を用意できるよう、今後も努めていきたいと思っています