【第98回高校サッカー選手権総括】静岡学園が「王国」の誇りを取り戻す
盤石の強さで連覇を狙ったプレミア王者・青森山田を決勝で下したのは、静岡学園だった。24年ぶり2度目の優勝を果たした「静学」を中心に、激動の大会を振り返る。
技術を試合で発揮するための判断力とは
「ハイプレスのチームが勝ち上がる傾向にある。そこを打ち破るチームが出現した時、高校サッカーは一つ上のレベルになる」
昨年度の選手権決勝で青森山田に敗れた準優勝校・流経大柏の本田裕一郎監督はそう語っていた。前者は言葉で表現するとシンプルだが、これを体現できるチームは限られている。数的優位を維持する守備の連動、プレッシングからボールを奪い取るフィジカル、素早い攻守の切り替えからゴールへと結実させる個の決定力。これらを技術ある選手が、試合を通して「徹底」できるのが、王者・青森山田の強者たる所以だ。
今大会、プレミアリーグファイナルを制した“高校年代最高峰チーム”に、準々決勝から攻撃型サッカーを標榜する3校が挑む形となった。ポゼッション主体で卓越した技術と個の力を結集した昌平、帝京長岡、そして静岡学園だ。先に放たれた2本の矢は、あと1点が届かずに力尽きたが、3本目の矢はついに絶対王者を貫くことに成功した。
王者の一瞬の綻びを突く
優勝後の記者会見で、川口修監督は自身の育成論についてこのように語っている。
「井田勝通前監督が45年の歴史で個を伸ばし、上のステージで闘える選手を育てた。私がそれを受け継ぎ、“技術を試合で発揮するための”判断力を養うよう徹底してきた」
決勝前半、王者山田のプレッシャーに晒され、劣勢となった静学は後半に息を吹き返す。川口監督が前半で懸念した「中盤3人の距離」は、一気に縮まり、中央から押し上げることでサイドに活路もできた。激戦続きによる疲労の蓄積もあっただろうが、青森山田の強固な守備ブロックの一瞬の綻びを、“判断力”を叩き込まれた静学メンバーは見逃さなかった。手繰り寄せた風向きは最後まで変わることなく、静学が24年ぶりの優勝を手にした。
「“徹底”することで青森山田に勝利があった。今回はそれが一瞬だけできなかった」と黒田剛監督は選手を労いつつ、敗因を語った。
潮流を表現した冒頭の本田監督の言葉は、1年後の予言となった。元号が令和に変わった最初の選手権、「王国」の再興を思わせる静学が、高校サッカー新時代の扉を開けた。
静岡学園 優勝までの道のり
●1回戦(2019.12.31/駒沢陸上競技場)
静岡学園 6-0 岡山学芸館
【得点者】井堀二昭3(29分、46分、51分)、小山尚紀(34分)、岩本悠輝(77分)、草柳祐介(80分+3)
●2回戦(2020.1.2/駒沢陸上競技場)
丸岡 0-3 静岡学園
【得点者】小山尚紀2(2分、40分+2)、岩本悠輝(62分)
●3回戦(2020.1.3/駒沢陸上競技場)
静岡学園 2-0 今治東
【得点者】浅倉廉(4分)、小山尚紀(47分)
●準々決勝(2020.1.5/駒沢陸上競技場)
徳島市立 0-4 静岡学園
【得点者】阿部健人(16分)、岩本悠輝3(22分、40分、70分)
●準決勝(2020.1.11/埼玉スタジアム2○○2)
静岡学園 1-0 矢板中央
【得点者】松村優太(90分+4)
●決勝戦(2020.1.13/埼玉スタジアム2○○2)
青森山田 2-3 静岡学園
【得点者】中谷颯辰2(45分+2、85分)、加納大(61分)