どこまでが“トレーナーの仕事”なの!?サッカー現場におけるトレーナーの役割とは?
トレーナーと一言でいってもその役割はさまざまだ。選手のケア、リハビリなどのメディカル分野から、筋トレやストレングスなどのフィジカル強化…、一体どこまでが「トレーナー」の役割なのだろうか?
主に「メディカル」と「フィジカル」に特化
現在のスポーツ現場の主流としては、アスレティックトレーナー(AT)の資格だけでなく、医療資格(理学療法士、鍼灸師等)も持っているトレーナーが、メディカルスタッフとして働いています。選手に異変があれば適切な治療を行い、ケガをした選手のリハビリテーションも担当します。代表など大きいチーム・組織で複数人が役割分担をする場合は、マッサージは鍼灸中心の方、リハビリにおいては理学療法中心の方、ピッチ上ではAT 資格を持ったトレーナーが担当します。
フィジカルトレーナーは、CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)などのストレングス系トレーニングの資格を持ち、ケガから回復し動けるようになった選手のパフォーマンスを引き上げていく仕事になります。コーチングスタッフとして、監督と一緒に練習強度を確認し、選手の疲労が確認できればピッチを狭くして行うなどのトレーニングの調整を行います。
専門家同士の相互理解の重要性
サッカー界ではこのようにメディカル、フィジカルで分かれているケースが多いですが、他の競技では「トレーナー」として一括りで担当するケースもあります。僕はこの前者と後者の中間もすごく大事だと思っています。メディカル、フィジカルのトレーナーが、それぞれがAT を持っていることで相互理解も早く、リレーションが上手くいくケースがあります。両方のスペシャリストの中間を保つ人を「コンディショニングコーチ」と表現しているチームもあります。また、20年以上前は根性論で、壊してでも「鍛える人」と、それを「治す人」という役回りでお互いの理論が衝突することもありましたが、現在ではいかに“壊さずに鍛える”かが定着しているので、対症療法として手技で痛みを緩和するメディカルトレーナーと、運動指導、トレーニング指導で身体能力の強化するフィジカルのトレーナーとの両者のバランスは良くなっています。
このように、トレーナーは多岐にわたって必要な能力が求められます。デジタルによりあらゆるデータを解析する時代、今後は修士号(マスター)を取得して、フィジカルのライセンスも持ったスペシャリストが現場では求められてくると思います。
トレーナーに求められる主なライセンス一覧
アスレティックトレーナー
スポーツ選手の健康管理やケガ予防、救急処置、リハビリなどメディカル部門に強い専門職。日本スポーツ協会認定の「JSPO-AT」の民間資格があり、実技試験を受験するには教会認定養成校にて180時間の実習時間の履修が必要となる。
理学療法士
リハビリテーションに携わる医療専門職で、病気やケガ、加齢、障害などによって運動機能が低下した人に対して、日常動作の回復や悪化防止につながる治療を行う。国家資格(国が法律で定め、国や地方自治体などが認定する資格)の「登録理学療法士」は5年間の研修を経て取得できる資格で、長期の計画と取り組みが必要になる。
鍼灸師/あん摩マッサージ指圧師
鍼灸師とは「鍼(はり)」と「灸(きゅう)」を使い全身にあるツボや皮膚・筋肉に刺激を与え、健康回復を目的として治療を行う、「はり師」と「きゅう師」の国家資格を両方持つ東洋医学の専門職。はり師・きゅう師の資格取得が必要で、鍼灸学科のある専門学校などを卒業し、年1回の国家試験に合格する必要がある。
NSCA-CSCS
米国NSCAが認定する民間資格(世界共通資格)。CSCSはストレングスとコンディショニングの両方の知識を学ぶ必要があり、想定する指導対象は主にアスリート。安全に配慮したトレーニングプログラムを計画・実行する高度な専門知識と技能が必要とされる。