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サッカーの指導現場

新年度、リスタートを切る皆さまへ。焦らなくていい、一歩ずつ「自分たちのペース」を見つけよう【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは。大槻です。

桜の季節が過ぎ、いよいよ新年度が本格的にスタートしましたね。お子さんの進級や進学、または新しいチームへの加入など、環境が大きく変わったご家庭も多いのではないでしょうか。

新しいユニフォームに袖を通すときの高揚感、初めて会うコーチや仲間への期待。その一方で、「練習についていけるかな?」「新しい環境で友達ができるかな?」という、言葉にできない不安を抱えているお子さんの姿に、親御さん自身も少しソワソワしてしまっている……そんな時期かもしれませんね。

まずは、新しい一歩を踏み出したお子さんと、それを支える皆さまに「お疲れ様です」と伝えたいと思います。環境の変化は、大人以上に子どもたちの心と体に大きなエネルギーを消費させます。今はまだ、期待と不安の波間に揺れていて当然。まずはそれを受け止めることから始めてみましょう。

「慣れない」のは当たり前。焦りは禁物

新年度のグラウンド。周りの子がみんな自分より上手に見えたり、コーチの指示が今までと違って戸惑ったりすることもあるでしょう。そんなとき、ついつい「早く馴染まなきゃ」「もっと積極的に行かなきゃ」と親子で焦ってしまうことがあります。

ですが、ちょっと待ってください。
サッカーにおいて「状況を把握する力」が大切なように、新しい環境に慣れるのにも「観察する時間」が必要です。

* 今のチームはどんなリズムで動いているのかな?
* 新しい仲間はどんな子なのかな? どんなプレーをするのかな?
* 自分はこの場所で、どんな役割を求められているのかな?

これらを肌で感じるには、それなりの時間がかかります。たとえ最初は控えめだったとしても、それはお子さんが一生懸命に新しい環境を読み取ろうとしている証拠です。少しずつ、自分の居場所を固めていけばいいんです。焦って無理に自分を作ってしまうより、じっくりと自分らしく馴染んでいくほうが、結果として長く良いパフォーマンスを維持できるものだと思います。

春のサッカーグラウンド

優先順位の整理。「全部」を頑張りすぎない

新年度は、生活のリズムが安定しないなかで、やるべきことが一気に押し寄せてきます。学校の提出物や宿題、サッカーでは新しい練習メニュー、生活のリズムが変わって早起きしたり、そして新しい仲間とのコミュニケーション……。すべてを完璧にこなそうとすると、子どもたちのキャパシティはすぐにパンクしてしまいます。

そこで大切になるのが、頭の中の「優先順位の整理」です。今の自分にとって、何が本当に大切なのか。親子で一緒に、以下の4つのステップで整理してみましょう。

1. やらなければならないこと(生活の基盤)

まずは、人間としての土台、そして学生としての本分です。
「宿題を終わらせる」「しっかり寝る(体調管理)」「チームの集合時間を守る」。
これらはサッカー選手である前に、一人の人間として守るべき「最低限のルール」ですよね。ここが崩れると、どんなに練習しても力になりません。まずはここを「当たり前」にクリアすることから始めましょう。

2. やるべきこと(成長の鍵)

次に、サッカーと真剣に向き合うための姿勢です。
「練習に100%の力で取り組む」「自分のスパイクを自分で磨く」「好き嫌いせずに食べる」。
これらは、自分の意志でコントロールできる「質の向上」に直結します。新年度、新しい技術を覚えることよりも、こうした「取り組む姿勢」を固めることのほうが、後々の大きな成長につながります。少し難しいことがあっても諦めずにやり抜く姿勢が大切です。

3. やっておいたほうが良いこと(プラスアルファの努力)

ここは、心と時間に余裕があるときに取り組むステップです。
「家での自主練習(リフティングなど)」「試合のビデオを見返す」「サッカーノートを書く」。
これらは向上心を形にする素晴らしい行動ですが、新生活に慣れないうちは、これらが「義務」になって自分を追い詰めないように気をつけてください。「余力があればやる」くらいのスタンスで、まずは心にゆとりを持つことが先決です。

4. やらなくても良いこと(心の整理整頓)

そして意外と重要なのが、この「手放す」作業です。
「夜遅くまでのゲームや動画視聴」「SNSを気にする時間」、そして何より「他人と自分を比べること」。
新年度、周りが気になって不安になるのは分かりますが、他人との比較は今の時期、最も「やらなくても良いこと」です。不要なノイズをカットすることで、本当に集中すべきことにエネルギーを注げるようになります。

サッカーをしている子ども

目の前の一歩が、やがて「見たこともない景色」を作る

優先順位が整理できたら、あとは「今日、目の前にある一歩」をクリアすることだけに集中しましょう。大きな目標を持つことは素晴らしいことですが、遠くの山頂ばかり見ていると、足元の石に躓いてしまいます。

* 今日の練習では、攻守の切り替えを徹底的にやる。
* パスを受ける前に、必ず一度首を振る。
* 練習が終わったら、しっかりストレッチをする。

どんなに小さなことでも構いません。その日その日の「小さなミッション」を一つずつクリアしていく。その積み重ねが、気づいたときには大きな自信となり、最初は想像もできなかったような場所へと運んでくれます。「小さな“できた”の積み重ね」が何よりも大切です。

サッカーをしている子ども

その「苦悩」は、成長痛

もし、お子さんが壁にぶつかって悩んでいるなら、こう伝えてあげてください。
「その苦悩は、決して悪いことじゃないんだよ」と。

何も悩みがない状態というのは、裏を返せば「今の能力で足りてしまっている」状態です。苦しい、悔しい、うまくいかない……そう感じるのは、お子さんが「自分の限界を超えようとしている」、あるいは「高いレベルに挑戦している」証拠です。

心の葛藤もまた、選手としての、そして人間としての強さを作る「成長痛」です。今の苦しみは、未来の成功のための前払い。そう思えば、少しだけ景色が変わって見えてくるものです。

悩んでいる様子の子ども

【保護者の皆さまへ】サポーターとしての「見守り方」

さて、ここからは保護者の皆さまへのアドバイスです。子どもが新しい環境で苦戦しているのを見るのは、親として何より辛いもの。ついつい手や口を出したくものです。しかし、ここが踏ん張りどころです。

■ 「解決」より先に「共感」を

子どもが悩みを打ち明けてきたとき、すぐに「こうすればいいじゃない」と解決策を提示するのは控えましょう。まずは「そうなんだ、それは大変だったね」「悔しかったね」と、100%の共感を持って話を聞いてあげてください。子どもは「親は自分の味方だ」と確信できて初めて、次の一歩を踏み出す勇気が持てるようになります。

■ 誰かを下げて、我が子を上げない

「あの子よりあなたのほうが上手よ」「あのコーチは分かってない」。
不安な我が子を励ましたい一心で、つい他者を否定する言葉を使ってしまいがちですが、これは禁物です。他人の評価を下げることで得る自信は、脆く、長続きしません。また、子どもが「人のせいにする」癖をつけてしまう原因にもなります。

■ 「勇気」を称え、「改善」を共に探る

結果がどうあれ、新しいことにチャレンジしたその「勇気」を最大限に称えてあげてください。
「今日、あの場面で仕掛けたのはカッコよかったね!」。その上で、「もっとうまくいくためには、次はどうしてみる?」と、本人に考えさせる問いかけをしてみてください。頭ごなしに否定するのではなく、未来への提案。このスタンスが、子どもの自立心を育てていきます。

サッカーグラウンド

おわりに

新年度、最初から100点満点を目指す必要はありません。
少しずつ、一歩ずつ。
時には立ち止まっても良いと思います。

サッカーは、失敗を繰り返しながら正解を見つけていくスポーツです。それは人生もまた同じかもしれません。この春の戸惑いや葛藤が、いつか素晴らしいゴールへとつながることを信じています。

まずは、親子で深呼吸をしてみてください。
新しいシーズンを、一歩ずつ楽しんでいきましょう!

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