仲間に出会えただけで人生丸儲け。サッカーがくれた“相棒”との物語
『サッカーをしていて一番良かったことは何?』
もし、誰かにそう聞かれたら−−
息子のそばで見ている母としては、迷わずこう答えます。
“人との出会い”だと。
深い結びつきが見えるサッカーの仲間って、やっぱり特別に感じます。
特に小学生は遠慮なんてしないから、何でも競って感情むき出しにして張り合って、すぐ言い合いにもなる。
それでも、目標や目指している場所は同じで、喜びも同じ。
この矛盾した関係をずっと続けているから深いつながりが生まれるのか、大人になるとなかなかできない真っ直ぐで本気な関係を見ていると、思わず羨ましくなります。
そんな特別な関係の中でも、
特に強くつながっている存在が息子にはいます。

サッカーに取り憑かれた日
息子が3年生になるタイミングの春休み。
ボールで遊んでいたら、あの子が声を掛けてくれました。
『一緒に試合に出よう』
その数日後には、もう同じ大会に出て、肩を組んで喜んだりしました。
サッカーのルールなんて知らなかった息子に、あの子はたくさんのことを教えてくれました。
そして初めての大会で、まさかの準優勝。
メダルをもらって、トロフィーを囲んで大喜びしていた息子。
でもその隣で、あの子は泣いていました。

その様子を見て少し戸惑った顔をしていた息子は、そのとき、初めて知ったと思います。
「“本気で戦う”って、こういうことなんだ」って。
息子は、この日を境にサッカーに取り憑かれ始めました。
“相棒”とのサッカー
ゴールを決めること。
試合に勝つこと。
もちろんそれも嬉しいし、練習だって楽しくて仕方がなかったと思います。
でも息子が夢中になっていたのは、それだけではありません。
「あいつならここにいる」
「今、パスが来る」
言葉にしなくても分かる感覚。
これが楽しくて仕方がなかったようです。
通じ合う感覚を共有できる、あの子の存在。
“相棒”とできるサッカーにどんどん夢中になっていく息子たちの姿は、見ている大人たちの心まで熱くしてくれました。
このままずっと見ていたかったけれど、1年後に、その“当たり前”は終わりを迎えることになりました。
あいつと俺の関係
3年生
一緒に受けたセレクションで、俺が前日に牡蠣を食べて落ち込んでいたとき、あいつは見事合格してスペイン遠征に行った。
「チクショー、俺だって!」って、焦った俺は、楽しくて大好きだったチームを辞めて、強豪チームへ移籍した。
負けたくない、上手くなりたい、強くなりたい。
もっともっとが止まらなくなったから、あいつと離れる決断をした。

4年生
俺が移籍して調子良いとき、あいつは苦しんでいた。
泣いているあいつを見ると、俺の心もちょっと痛くなる。
「負けるな、やれ! おまえならできる!」
「がんばろうぜ、またな」
5年生
俺が大怪我をして毎日泣いていたとき、あいつは県トレに受かった。
嬉しいのと悔しいのがごちゃごちゃになって、俺は大泣きした。
「おめでとう」の後に、チクショー、俺だってー!! が爆発した。

あいつがいるから頑張れる、とかじゃない。
あいつがいるから、立ち止まっていられない。
いつも心の中にあった「いつかまた同じピッチに立ちたい」
そして、俺が怪我から復帰して、思うようにいかなくて最高に苦しんでいたとき、あいつは俺のチームに移籍した。
「よっしゃー!」って大喜びしたけど、
「当たり前だろ、おっせーよ!!」のほうが、大きかった。

1つのボールから始まった友情
そして、今、小学校最後の6年生。
息子は、またあの子と一緒に走っています。
ボール1つから始まった、特別な関係。
お互いの成長が自分の原動力にもなる2人。
大人になった2人を想像してみたりすることもあります。
それぞれの道を歩いて、もう同じチームにはいないかもしれない。
もしかしたらサッカーから離れているかもしれない。
それでも、簡単に“過去”にはならないことは分かります。

切磋琢磨できる“相棒”に出会わせてくれたサッカー。
子どもたちの人生を豊かにしてくれるサッカー。
すぐに会いたくなる大好きな仲間たちと本気で戦った記憶が、きっと将来の息子を助けてくれる。
毎日を本気で過ごしている子どもたちの今は、未来へとつながって、それはいつか大人になった自分の背中を押してくれる。
“あんなに夢中になれた時間があった”という事実は、必ず人生の中で、心の盾になってくれる。
そんな仲間たちに出会えたのなら——
ほら、もう人生丸儲け。

そんな姿を見ているだけで、母の心も満たされます。
すべての経験は財産でしかない、だから、今日も楽しんでーー!
