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サッカーができない半年間。それでも息子が“サッカーをやめなかった理由”

もうすぐで5年生になるというタイミングで、息子が病院で告げられた診断名は「離断性軟骨炎」でした。

 「1カ月サッカー禁止、様子を見ましょう」

県選抜の選考会を目前に控えたタイミングでもあり、一瞬、現実なのかわからなくなりました。
整理も理解もできないまま、とりあえず受け取った松葉杖。
まさかこれが、こんなにも長い間必要になるなんて思いもしませんでした。

それでも1カ月後には良くなっていると信じ、希望を持って迎えた再診日。

「変わっていません、まだサッカー禁止ね。また1カ月後に来て」

医師の淡々とした言葉をどう受け止めていいのかわかりませんでした。

県選抜選考会には確実に間に合わないと悟った瞬間、隣で明らかに大きなショックを受けて頭を抱えている息子。

母としてできることを探して

医師は医学的に正しい判断をしている。

そんなことはわかってる。

だけど、ショックと焦りと心配で、どうしようもなく不安でたまらない。

だからって立ち止まっているのも怖くて、とにかく動くことにしました。

ケガを徹底的に調べ情報を集め、たくさんの方のお話を聞いて病院も変えました。
海外の友人にも相談し、他の方法を探し続けました。そのときの私は、息子を守るのに必死でした。

10歳の決断

そして最終的に、医師の話を聞いて手術を決断したのは息子自身でした。

あのとき、息子は10歳。

その選択は簡単ではなかったはずなのに、彼の口から出た言葉は、

「もう我慢できない、蹴りたい、サッカーしたい」

ただ、それだけでした。

手術をすると決めてからは、少しだけ先が見えたような気がして、気持ちも少し落ち着きました。

それでも、不安のままただ祈るだけの手術日を待つ1カ月間は、あまりにも長い時間でした。

そして、入院と手術。

手術が終わり手術室から出てきた息子は、まだ麻酔で眠っていました。

息が詰まるような緊張に包まれていたなか、主治医の先生が眠っている息子に声をかけました。

「おーい、早く起きろ! サッカーできるぞ!」

すると息子はとっても迷惑そうに、

「まだ、ねむい! うるさいなぁー」

みたいな返事をして、また寝てしまいました。

恐怖に支配されていた心が、ようやく緊張から解放された瞬間でした。

あのときの医師の言葉と普段通りの息子のやりとりに、私たち家族がどれだけ救われたか。

本当に息子はまたサッカーができる! って、やっとそう信じられた、最初の瞬間でした。

プレーできなくても、チームの一員

それから、毎日リハビリをがんばりました。松葉杖生活は合計4カ月。

その間に、3度の県外遠征がありました。
沖縄からの遠征は、毎回飛行機移動です。
大きな荷物を抱え、慣れない空港を松葉杖で歩く。

チームと同じ行程をこなしながら、ピッチには立てない。

「行かなくてもいいんじゃないか」

そんな声もありました。

それでも息子は『行く』と言いました。

ベンチから声を張り上げ、

仲間を応援しビデオ係を引き受け、

海外選手のサポートもしました。

盛り上げ役をがんばったそうです。

プレーはできない。

それでも、チームの一員であり続けました。

初めて試合に出られない気持ちも知りました。

「サッカーと仲間と離れなかった大切な時間」になりました。

やっと松葉杖が外れて喜ぶのも束の間。さらに2カ月間サッカーは禁止でした。

10歳男子にとって2カ月は長すぎます。
隙を見てはボールを蹴ってしまう毎日が始まりました。

松葉杖がないのならば、もちろん走る。

嬉しければスキップしてるし、階段があれば飛ぶ、木があれば登る。

水があれば、助走までつけてジャンプする。

とにかく瞬発的に動き回るのが子ども。
あんなに苦しい痛い思いをしたのに、すぐに忘れてしまうのも子ども。
それを止めるのが、本当に大変でした。

家中のボールを隠しても必ず見つけ出す執念に、何度悲鳴をあげたことかわかりません。

そして、ピッチへ

そんな日々を越えて、
ついに医師からのGOサイン。

本当に、目を輝かせて走っていました。

半年ぶりの練習後に、母のところに駆け寄って息を弾ませながら息子が言いました。

「もう、県トレとかトレセンとかAとかBとか、どーでもいい!! Zチームでいいからサッカーしたい!!」

順位でも評価でもなく、

ただ“できる喜び”を再確認するように、

『やっぱりサッカーはこれなんですよ!』って、

それはそれは嬉しそうに興奮して話していました。

“好き”がいちばんの力になる

どんなこともがんばれたのは、サッカーが好きだから。

痛いのも辛いのも、この『好き』で乗り越えました。やっぱり『好き』がいちばんの薬。

お願い、そんなに頑張らないで、無理しないでって思ってしまうのも母の本音。

けれど、その背中を見ていると、止めるより応援してしまうのも母の本心。

すべての経験は財産になる。

だから、今日もがんばれー!

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