練習のしすぎはよくないの!?「オーバートレーニング」について知っておこう
サッカーが上手くなりたいという思いから、練習漬けの毎日になっている子もいるのでは?でも、練習量が多すぎると身体やメンタルに影響してしまうことも!そこでサカママとして押さえておきたい子どもの「オーバートレーニング」について、慶應義塾大学体育 研究所・特任講師の山口翔大さんにお聞きしました。
「サッカー+習い事」が主流。子どもたちの負担は増えている
「クラブチームとゴールキーパースクール」「サッカーと水泳」など、掛け持ちしている子は多いのではないでしょうか。習い事に1つ以上通っている子は7割を占めているという調査結果※もあり、サッカー+習い事は主流になっています。親御さんはよかれと思って環境を与えていても、実はその分、子どもたちにかかる負担は大きくなっているのです。
また、ここ数年、日本のサッカーのレベルが上がり、ジュニア年代のサッカーも高度化し、多くのスキルを求められる傾向にあります。子どもたち自身も“海外で戦うためには”という意識が高まっていますよね。J FA(日本サッカー協会)では、練習量のガイドラインを設けてはいるものの、高度なスキルを得ようと習い事を増やしたり、平日も休日も休みなく練習に励んでいる子が増えているように感じています。
※2024年ベネッセ総合研究所の調査

真面目な子どもほど、メンタルに影響する可能性も
一般的にオーバートレーニングとは、練習のやりすぎにより慢性的な疲労状態になってしまうこと。子どもの場合は、トレーニングを過剰にしてしまうと、膝やかかとの痛みなどケガ(障害)のリスクが高まったり、精神面に影響しサッカーをする意欲がわかなくなってしまうことがあるのです。真面目な子ほど、指導者や親の期待に応えようと練習を頑張りすぎてしまい、結果、メンタルに不調をもたらしてしまうことに…。
子どものオーバートレーニングを防ぐには、適切な練習時間を参考にして、サッカーを休む日を決めることが大切。その日は、他の習い事などもできるだけ調整し、身体を休めるといいでしょう。ただ、練習時間の基準値はあっても、許容範囲は十人十色。基準値の範囲内なのに疲れを感じてしまう子もいれば、まだまだ平気な子もいるはずです。大切なのは、親御さんが日頃から子どもと向き合い、話を聞いてあげること。そうすれば、子どもの身体の痛みや心のサインに気づき、許容量も見極められるはずです。そのうえで、子どもが「まだ、やれる!」というのであれば、ときにチャレンジを促してあげることも必要だと思います。

夏休みはサッカー以外のことにチャレンジしよう!
夏休み中もサッカーを休む日を設け、読書や書道、料理をしたり、異なる文化のものに触れる機会も増やすといいでしょう。子どもたちの人生にとっては、サッカー以外の時間のほうがはるかに長いもの。今の時期にいろいろなことにチャレンジして、サッカーの他に長けたことや興味のある分野を見つけることが大事なのです。休みの間も不規則な生活にならないように睡眠時間をしっかり確保し、バランスのよい食事がとれるようなサポートを心がけましょう。
先にも述べたように、子どもたちは日々、習い事が多く負担のかかる毎日を過ごしています。サッカーだけでなく総量を見て、わが子にいろいろなことをやらせすぎていないか、広い意味でオーバートレーニングになっていないかを今一度見直してみるといいでしょう。

オーバートレーニングになってしまうと…
オーバートレーニングによる身体や心の不調を知っておき、子どものケガの兆候や心のサインを見逃さないように!
カラダ
過剰なトレーニングは、成長期特有のケガの原因に

子どもは骨形成が成長途中。1本の骨の中の骨幹(中央部)と骨端(端)の間には成長軟骨と呼ばれる部分があり、成長とともに伸びて硬くなっていきます。成長軟骨は骨の至るところにあり、サッカーの練習をしすぎるとここに過度な負荷がかかり、成長軟骨に付着している腱が引っ張られて、痛みが生じてしまうのです。
中でも起こりやすいのが、膝が痛む「オスグッド・シュラッター病」や、かかとに痛みが生じる「シーバー病」。また、腰の捻り・反り動作を繰り返すことで疲労骨折が起きる「腰椎分離症」になることも。これらはジュニア年代特有のケガであり、練習をしすぎてしまうと、ケガのリスクが上がっていくと言えるでしょう。
起こりやすいケガ
- 膝の痛み → 膝蓋腱炎
- かかとの痛み → シーバー病
- 膝の下側の痛み → オスグッド・シュラッター病
- すねの痛み → シンスプリント
- 腰の痛み → 腰椎分離症(腰の疲労骨折)

ココロ
やる気を失い、サッカーが嫌いになることも

許容範囲を超えた練習を続けてしまうと、精神面にもストレスがかかってしまい、子どもはやる気を失ったり、サッカーが嫌になってしまうなど「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の状態になってしまうことがあります。とくに、真面目な子や試合で「僕が上手くパスを出せなかったから…」などと自分で背負い込んでしまうタイプの子は、メンタルに影響しやすいのです。「最近、なんとなく元気がない」「サッカーへの意欲がわいてない」と感じたら、練習のしすぎがメンタルに影響している可能性も。また、子どもは親からのプレッシャーを感じると「練習しているのに何をやってもダメなんだ…」と自己肯定感が下がってしまう場合もあるでしょう。
メンタル不調のサイン
- 元気がなくなる
- 意欲がわいていない
- 食欲が落ちている
- 朝、起きられない

山口さんの体験談
サッカー少年だった小、中学生の頃、休むことなく、練習に明け暮れる日々でした。レベルの高いチームでレギュラーになると、親や指導者の期待が増していき、それに応えないといけないという思いから、より練習するようになったんです。でも練習を頑張るほど、「なんでサッカーをやっているんだろう…」と意義が見出せなくなってしまい、結果、中学3年のときにチームを自ら離脱。サッカーが高度化している昨今、小学校高学年頃から、そうした感情が起きる子もいるように感じています。

イラスト/アキワシンヤ