W杯代表選手に学ぶ、子どもの「できない理由」を手放す方法
皆さんこんにちは! 第4回の今回のテーマは、アドラー心理学の「目的論」です。
「どうせ無理だよ」「だって○○だったから」「いつもあの子のせいで…」
サッカーだけでなく、日常生活の中でも、子どもがこんな言葉を口にすることはありませんか?
親としては「そんなことないよ」「次は頑張ろう」と励ましたくなる一方で、なかなか前向きになれない姿に悩むこともあるでしょう。
実は、子どもが悲観的な考え方や言い訳にとらわれてしまう背景には、心の中で起きている“ものごとの捉え方”が関係しています。
今回は、子どもが「できない理由」を探してしまう心の仕組みを、フロイトの「原因論」とアドラーの「目的論」という2つの考え方から見ていきます。
フロイトの「原因論」 vs アドラーの「目的論」
心理学には、人の行動や考え方を説明するさまざまな理論があります。その中でも有名なのが、フロイトの「原因論」とアドラーの「目的論」です。
まず、フロイトの「原因論」は、「過去の出来事や今の環境が、現在の結果を作っている」という考え方です。
うまくいかなかったとき(結果)に「なぜそうなったのか」と過去の体験から原因を探し出し、原因と結果を結びつけます。
しかし、これをサッカーのピッチにそのまま持ち込むと、弊害になることがあります。
「新しい監督の基礎練がキツくて疲れた(原因)から、試合で動けない(結果)」、あるいは「僕はみんなより小柄(原因)だから、いつもヘディングは競り負けちゃう(結果)」
このように、結果が出なかった理由を過去や環境に求め続けると、自分では変えられないことに意識が向き、成長のチャンスを逃してしまうことがあります。

それに反する考え方として登場するのが、アドラーの「目的論」です。アドラーは「どのようになりたいのか(目的)が問題なのであって、できない理由(原因)には意味がない」と考えました。
たとえ試合で思うようなプレーができなかったとしても、原因探しに時間を使うのではなく、
「次の試合ではもっと走れるようになりたい」
「ヘディングで競り負けないために何ができるだろう」
と、未来に目を向けることが重要だという考え方です。
子どもたちが成長していくために必要なのは、できない理由を並べることではありません。「これからどうしたいのか」を考え、自分で行動を選んでいく力なのです。
スター選手に見る、「目的論」の実例
サッカーの歴史を見れば、変えられない環境(原因)に縛られず、なりたい未来(目的)のために脳を切り替えて世界レベルに達した選手が大勢います。
ワールドカップにも出場した日本代表FWの上田綺世選手は、182センチと欧州ではさほど大柄ではありません。もし彼が「欧州リーグでは自分のヘディングは通用しない」と原因論で諦めていたら、今の活躍はないでしょう。
そこで彼は「海外の屈強なDFに競り勝つ」という目的のために驚異的なジャンプ力を練習により開発し、今や2m50cmを超える最高到達点からゴールを量産しています。

さらに象徴的なのが新星・塩貝健人選手です。
彼は「世界にデュエルで勝つ」という明確な目的を立て、スピードと強靭な体幹の両立のために、人類最速のウサイン・ボルトの走りを徹底分析したそうです。試合前日に自炊するこだわりのボロネーゼに至るまで、凄まじい努力で「時速36.2kmのスピード」と「当たられても倒れない肉体」の両方を自ら創り上げました。
彼らは「体格が違うから」と可能性を閉ざすのではなく、「この条件で勝つために、自分に何ができるか」という目的論に脳を切り替えたからこそ、自らの才能を覚醒させることができたのです。
家庭での対話法 〜親の問いかけで「目的」のスイッチを入れる〜
子どもが家で不満や諦めを言うのが日常なとき、親ができる最大の「勇気づけ」は、問いかけの方向を「過去の原因」から「未来の目的」へとシフトすることです。
子どもが「基礎練がキツくて試合で動けなかった」と言い訳をしたら、「キツかったんだね。じゃあ、その疲れたコンディションで、チームを勝たせるために次はどんなプレーができそう?」と問いかけます。また、「いつもビリだから無理」と自信をなくしている子には、「どんな自分になれたらいいと思ってる?」と、望む状態に光を当ててあげます。
ポイントは「なぜ(Why:原因)」と問い詰めるのではなく、「何のために / 次はどうする(What / How:目的)」を一緒にワクワクしながら引き出すことです。特に勝ち気な子には、「このメンバーでどうやってチームを勝たせるか」という戦術的な問いかけをすることで、本人の高いモチベーションに火をつけることができます。

まとめ
原因論の世界(他人との比較や環境への不満)にいることは、子どもが自信を持って羽ばたくことを難しくしてしまいます。しかし、アドラーの「目的論」を身につけた子どもは、現状を受け入れつつ、「目標を達成するためには、自分は何をしたら良いか」を前向きに考えられるようになります。
この前向きな主体性こそが、上達が遅いチームメンバーにも優しく接することを可能にし、不平が多い仲間に流されず、「自分がチームのためにできること」を貫く「毅然とした勇気」へとつながっていくのです。
そして一旦身につけた「目的論」は、「今ある環境で、目的のために何ができるか」から発想する能力として、将来社会に出たときにも彼らを輝かせ続ける「一生モノの武器」になります。家族の温かい問いかけで、ぜひお子さんの中に「未来を変える目的論のスイッチ」を育んであげてください。
