神村学園高等部男子サッカー部 有村圭一郎監督に聞く!中高一貫指導で成長する理由とは?
ここ数年、中高一貫指導を行っているサッカー部が、高校サッカーで躍進を遂げているのを知っていますか?昨年度、全国高校サッカー選手権を制した神村学園高等部男子サッカー部・有村圭一郎監督に、中高一貫指導の良さや強み、6年間での選手の成長についてお聞きしました。
中等部で試合に絡んでいなくても高等部に入ってから先発出場
―中等部から一貫指導を行っている神村学園。6年間の一貫した指導の良さは、どういったところなのでしょうか?
「神村学園では、中等部から高等部に上が ってきた選手がピッチに7~8人立ち、主力を張っています。それは、中高一貫指導のシステムが上手くはまっているからだと思っています。
中等部の入学時と高等部3年になったときの身体能力は全く異なり、身体つきも見違えるほど変わります。中高一貫だからこそ、中等部の3年間では何をしておかなければいけないのかを指導し、高等部へつなげることができるのです。中等部では、ボールを止める・蹴る・運ぶといった基本技術を徹底し、細かく指導します。個の技術をしっかり身につけてベースができることで、高等部に上がって身体能力が伴ったとき、そのベースが大いに活かされるのです。さらに自分の特長も伸びていくため、個の能力としてより発揮されます。
6年間というスパンで育成するからこそ、そうした力が身について、伸びていく選手がたくさんいます。中等部ではほとんど公式戦に絡んでいなくても、高等部に入ってから先発出場する選手も出てくるのです。また、人間教育が色濃くできるのも中高一貫指導のメリットだと感じています」

―今夏に開催された第57回全国中学校サッカー大会では、神村学園中等部が優勝。中等部も躍進している印象です。
「全国優勝を目標には掲げているのですが、それだけを目指しているのではなく、中等部で大事にしているのは、先にも述べたように基本技術の徹底です。その中で、サッカーがどういうものかを教えたり、考えさせたりしながら進めていくことで、個人の能力も発揮されるんだと思います。中等部はここ6年間で4度優勝しているので、個人の育成をしながら結果も出てきつつありますね。
中等部は隣のグラウンドで練習していることもあり、日頃から彼らの様子を見ているんです。目を引く選手は遠征に連れてい ったり、タイミングが合えば大会に出すことも。中高一貫校では、クラブ申請をすればプリンスリーグなど高校の大会に中学生も出場することができるんですよね。今、ベルギーのシャルルロワSCでプレーする名和田我空や、栃木SC所属の大迫塁なども、中等部のときにプリンスリーグに出ていました。
中等部からの子たちが高校に上がったときも結果を残し、次のステージに進んでいきます。1学年30人程いるのですが、毎年3~4人をプロの世界へ送り出せているんです。そこには、中等部からの6年間、地道に積み上げてきたことがつながっていると思っています」
―以前soccer MAMAで取材した福島和毅選手も中等部から神村学園でプレーし、今年、アビスパ福岡に加入しましたね。
「中等部の頃からボールを扱う技術は、秀でたものを持っていたんです。高等部に上がってからは、いろいろな戦い方が要求される中、走力、チームを勝たせるための献身性、責任感などの力も身についていきました。それにより技術がさらに引き出され、魅力的な選手に育っていったと思います」

中等部の選手全員が高等部へ。寮生活で人として強くなる
―今、高校サッカーの強豪校は、中高一貫指導がスタンダードになっているのでしょうか?
「中高一貫校でなくても、クラブチームと高校が連携して強化している学校も多く、とくに高校が主体になっているクラブチームが増えてきている印象です。ただ、クラブチームの場合は、全員が高校に上がるのは難しいんじゃないかなと。
神村学園は中等部の選手全員が高等部に上がれるのがスタンダードです。A特待生、 B特待生など優劣をつけてしまうと、チームから出ていってしまう選手もいると思うのですが、神村学園は誰もが同じ条件で高等部に上がれます。だから、よほどの理由がない限り出ていく選手はいないんです。高校で募集するのは10人程度。技術よりも武器を持っている選手を選ぶことが多いですね。
中高一貫校なので、入学してくる人数が決まっていることもあり、多くの選手を抱えずに済み、教員として指導者を招き入れるので、学校の運営の中で活動できるんです。バックアップがしっかりしていることも、いいチーム作りにつながっていると思いますね」
―優劣なく高等部に上がれると保護者も安心ですね。
『6年間しっかり育成して、その先へ送り出す』というスタンスなので、保護者の方も信用して子どもを預けてくれるんだと思います。中等部には鹿児島県以外からも選手が集まり、35人程が寮生活をしています。私が中等部を指導していた頃、最初はホームシックになって泣いている子もいて、「一緒に寝てあげようか」と声をかけたこともありました(笑)。
でも、1カ月程するとけろ っとしていましたし、寂しいと思う間もないほど、サッカーに打ち込む時間が長いですからね。親元を離れて遠くで生活しようと決意する時点で、本当にすごいことだと思いますし、覚悟を持って入ってくれているんだなって。寮生活では洗濯などすべて自分でしないといけないので、人としても強くなりますね」
―中等部に入るための体験会では、どういった点を重視されているのでしょうか?
「今の子どもたちはボールを持たせたらみんな上手いので、上手な理由を探し出し、期待できる部分を持っている子に目を向けることが多いですね。足が速い、身長が高い、身体が大きいなども1つの特長になると思います。小学生の頃は、身長が高い子が活躍する傾向ではあるのですが、中学生以降になると、身長を活かしたプレースタイルが抜けづらく、伸び悩むこともあるのです。
身長は高いにこしたことはないとは思うのですが、大事なのは戦い方。昨年度、高等部からプロに進んだ2人は、170㎝に満たなかったですからね。背が低ければ走力をつけたり、背の高い子にはない特長を磨きあげればいいと思います。
神村学園に興味があれば体験会に参加し、保護者の方にも練習現場や学校、在校生など環境も含めて、しっかり見てほしいと思います。入る前に大いにリサーチし、鹿児島という地でやっていけるのか、子どもの意見を尊重して決断してほしいですね」

福島和毅選手はアビスパ福岡に加入し、プロデビュー。
押さえておこう!中学からのサッカー3つの基本
①中体連orクラブチーム
中学年代のサッカー環境は「中体連(中学校の部活動)」と「クラブチーム」に分けられます。中体連には私立の部活動も含まれ、近年は私立中高一貫校が全国規模の大会を制する傾向に。クラブチームは、Jリーグクラブのアカデミーから各地域に根づく街クラブまで、さまざまなレベルのチームが存在。両者は所属する組織が異なり、中体連は全国の中学校体育連盟サ ッカー専門部、クラブチームは各地域のサッカー協会(JFA)に所属します。

②セレクション・練習会
クラブチームに入るには「セレクション」という選抜試験があります。「声を出せる」「技術レベルが高い」「フ ィジカルが強い」など評価される要素はチームにより異なるものの、基本的に選考はゲーム形式。また、私立中高一貫校のサッカー部でも、練習会・体験会を設けています。セレクションや練習会の開催時期はチームによって異なるので、ホームページやSNSでチェックを。

③「高円宮杯JFA 全日本U-15サッカー選手権大会」
中体連とクラブチームは、それぞれで全国大会が行われます(中体連「全国中学校サッカー大会(全中)」、クラブチーム「日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会」)。そして、両者が一堂に会し、真の日本一を競うのが毎年12月に開催される「高円宮杯JFA 全日本U-15サッカー選手権大会」です。なお第37回(2025年)の優勝は、名古屋グランパスU-15に。


中学年代になるとボールサイズは4号球から5号球、試合も8人制から11人制に。また、ピッチのサイズも大きくなります。
写真/金子悟