今さら聞けない!? サッカールール「2026/27 競技規則の改正」
1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ! 今回は、まもなく開幕する新シーズンのJリーグでも早速適用される、新たに導入された競技規則について解説します。
ワールドカップで目にした機会も!? 規則改正の目的とは?
2026北中米ワールドカップの数々のスーパープレーをご覧になって、勝ち負けだけではなくサッカーの魅力を再認識されたのではないでしょうか? 一方で、2026/27競技規則の改正が実際にこの大会で施行・運用されましたが、今大会仕様の適用(ハイドレーションブレイクなど)があったり、あらためて検討する箇所もあったりするそうですので、今回の見解は7月10日までの暫定的なものとご理解いただけると助かります。
IFAB(国際サッカー評議会)は、「試合の価値を高め、魅力をより増やすこと」を目的に、試合のテンポアップを図り、実際のプレー時間(アクチュアル・プレーイング・タイム)の増加を目指しています。昨年、ゴールキーパーの手、または腕によってボールをコントロールすることへの8秒制限が成功裏に導入されたことが大きな要因ではないかと思われます。
では、具体的に今回の改正を解説していきましょう。ただ、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の拡大適用は大きな変化と思われますが、グラスルーツのサッカーとは異なるため、紹介のみとさせていただきます。
※なお、★は筆者の感想・意見です。
1.選手交代は10秒以内に完了
交代時、選手は10秒以内に競技のフィールドから離れなければならない。もし、時間制限を超えた場合、交代要員は1分が経過した後の最初のボールのアウトオブプレーまでフィールドに入れない。(第3条 競技者)
これまで通り、交代して退く選手は、既に競技のフィールド外に出ている場合を除き、主審の承認を得て、境界線の最も近い地点から競技のフィールドを離れなければならない。ただし、選手がハーフウェイラインのところから直接速やかに、または(たとえば、安全や警備、または負傷などのため)他の地点から離れるようにと主審が指示した場合を除く。
改正点として
①交代ボードが表示されてから、または交代ボードがない場合は、主審の交代の合図から10秒以内に競技のフィールドを離れなければならない。
②同一の競技の停止中に複数の交代を行った場合、交代して退くすべての選手は、最後の交代が示されてから10秒以内に離れなければならない。ただし、交代して退く選手が、負傷によりその制限時間内にフィールドを離れることができないときは適用しないことがある。
③交代して退く選手が10秒以内に競技のフィールドから離れなかった場合、交代で退く選手は、それでも離れなければならない。10秒を超えて過度に再開を遅らせた場合にのみ警告される。その場合、交代要員は、競技のフィールドに入ることはできず、プレーは再開される。そして、交代を取り消すことはできず、また別の交代要員を使うこともできない。
④交代要員は、プレーが再開され1分が経過した後の最初のプレー停止時に、主審の承認を得て入ることができる。1分経った後のボールのアウトオブプレーまで待機しなければならないため、少ない人数でプレーしなければならない。
⑤主審がハーフウェイラインのところで交代要員の用具を点検する場合、10秒は、点検が完了し主審が交代の合図をしたときに始まる。
★スムーズな交代を目的にしており、取り締まるわけではないと考えます。交代で退く選手が余韻を楽しんだり、観客に感謝したりする余裕はなくなり、やや寂しくなりますが、交代してプレーする選手に気持ちを託すことになるのではないでしょうか。

2.5秒以内のスローイン、ゴールキック
スローイン、ゴールキックを行う選手またはチームが、再開を遅らせている場合、5秒の時間制限を超えた場合、相手チームにスローイン、コーナーキックが与えられる。(第3条 競技者、第15条 スローイン、第16条 ゴールキック)
スローインやゴールキックが、再開を行うチームによって意図的に遅らされているとき、主審は笛を吹き、合図をして目で見てわかるように5秒をカウントダウンする。時間稼ぎや無駄な中断を防ぐためである。
ボールがカウントダウンの終了までにインプレーにならない場合、
⇒スローイン:主審は、元のスローインと同じ位置から行われるスローインを相手チームに与える。
⇒ゴールキック:主審は、ゴールキックが行われようとしていた位置に最も近い側から行うコーナーキックを相手チームに与える。
★主審が笛を吹き、合図をしてからカウントダウンします。グラスルーツのチーム・選手が十分に落ち着いて再開のプレーできるように主審が導きたいです。
3.負傷治療後の1分間ピッチ外待機
競技のフィールド上で負傷の程度の判断または治療を受けた選手、 負傷によりプレーの停止の原因となった選手は、競技のフィールドから離れ、プレー再開後1分間、競技のフィールド外にいなければならない。(第3条 競技者)
実際に負傷した、または負傷が疑われプレーを停止する原因となった選手、あるいは競技のフィールド上で負傷の程度の判断や治療を受けた選手は、試合のテンポを乱すことを減らすためだけでなく、その選手にプレーを継続させるべきかどうかをメディカルスタッフが見きわめるのに必要な時間を確保するため、プレーが再開されて(時計を止めずに計測したまま)1分間フィールドを離れていなければならない。
➀1分間、競技のフィールドを離れなければならない要件
フィールドプレイヤーは、次のいずれか1つ、またはそれ以上に該当する場合、プレーが再開されてから1分間は競技のフィールドを離れていなければならない。
•選手が実際に負傷する、または負傷の疑いがあることでプレーが停止される。
•主審がメディカルスタッフに競技のフィールドに入るよう合図した。
•主審が選手にフィールド上での負傷の診断が必要かを尋ね、選手が診断を求めた。
メディカルスタッフには、フィールド上で初期診断を行うための十分な時間を与えられるべきではありますが、重傷の場合を除き、フィールド上での治療を行ってはいけません。いかなる初期診断のあとも、選手は以下に示される場合を除き、競技のフィールドを離れ、プレーが再開され1分が経過(時計を止めずに計測)するまで離れたままでいる必要があります。
✓ゴールキーパーが負傷したとき
✓相手選手が警告される、または退場を命じられるような体を用いた反則(たとえば、無謀な、または著しく不正なファウルとするチャレンジ)の結果として選手が負傷したとき。
②競技のフィールド外にとどまる1分間について
•競技のフィールド外にとどまる1分間は、プレーが再開されたときに始まる。
•その1分間は時計を止めずに計測され、主審によって決定される。主審は、その他の審判員より援助を受けることもできる。
•選手は、主審の承認を受けた後にのみ復帰できる。ボールがインプレー中はタッチラインから復帰しなければならないが、アウトオブプレーであれば、いずれの境界線からであっても復帰できる。
•負傷した選手が交代する場合、交代は遅らせない。
•1分間が経過する前に前半が終了した場合、選手は後半の開始時から復帰することができる。この原則は以下の場合にも適用する。
✓通常の試合時間の終了時と延長戦の開始時
✓延長戦におけるハーフタイム
✓延長戦の終わりとPK戦(ペナルティーシュートアウト)
③1分間競技のフィールドを離れる必要がない場合
その選手が、
•負傷の診断は必要ないと答えたとき(プレーがその負傷により停止された場合を除く)。
•プレー中または、プレーの停止中にプレーの再開を遅らせないよう、自ら競技のフィールドを離れるとき。
•選手がフィールド上で治療を受けることが第5条により認められている、以下のような負傷があったとき。
✓ゴールキーパーが負傷した
✓ゴールキーパーとフィールドプレイヤーが衝突し、対応が必要になった
✓同じチームの選手が衝突し、対応が必要になった
★この改正が最も複雑で議論になると思われます。主審は、選手の安全を保障したいが、選手はかたくなに「大丈夫」と言い続けてプレーしないか、心配です。
4.アドバンテージの適用拡大
プレーの再開が正しくなくてもボールがインプレーとなったときは、アドバンテージが適用される。(第5条 主審)
たとえば、
・ファウルスローされたボールが相手選手に渡り、攻撃のチャンスとなれば、アドバンテージが適用される。
・ゴールキックを続けて2回触った(従来は相手チームの間接フリーキックとなる)場面で、そのボールが相手選手によってシュートされたならば、アドバンテージを適用する。
★審判員はこれまで以上に、プレーの状況を把握しなければなりません。選手は、笛が吹かれるまで、プレーを続けてもらいたいと思います。

5.イエローカード、レッドカードの一部適用変更
アドバンテージが適用され、得点が決まった場合の決定的な得点機会阻止(DOGSO)の反則には、警告(イエローカード)が示されない。(第12条 ファウルと不正行為)
反則が大きなチャンスとなる攻撃を妨害または阻止したものであった場合、警告されない。
★サッカーにとって得点は最大の目的の一つですが、相手が得点したことで、反則に対する懲戒罰が与えられないことになります。得点が最優先されます。
6.DOGSOの考慮点追加
チームの得点または決定的な得点機会を阻止した場合、退場の対象となる反則を行ったことになる。考慮に入れなければならないことが一つ加わった。(第12条 ファウルと不正行為)
従来の「反則とゴールの距離」「全体的なプレーの方向」「ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性」「守備側選手の位置と数」に新しく「攻撃側の選手の位置と数」という項目が加わり、5つの状況のすべてが揃うことが必要となった。
★従来から状況の考慮点として参考にしていましたが、明確化されましたので、より広い視野での一瞬の判断が審判員に求められます。選手は、より攻撃的に相手ゴールに向かってもらいたいと思います。
7.ドロップボールの適用追加修正
ボールがペナルティーエリア外にあって、アウトオブプレーになったならば、「ボールを保持したであろう」チームに、「再開を行ったであろうチーム」も含まれるとした。また、審判員、あるいは外的要因による妨害があったとき、ボールは妨害があった位置にドロップされる。(第8条 プレーの開始および再開)
★ボールがアウトオブプレーになったならば、ボールを保持したであろうチームにボールをドロップして再開することを追加しました。
8.PK時の反則の警告削除
「キッカーとゴールキーパーが同時に反則を行った場合、キックは失敗として記録され、キッカーは警告される」という文言を削除した。(第10条 試合結果の決定、第14条 ペナルティーキック)
キッカーとゴールキーパーが同時に反則を行った場合、PKはやり直し。ただし、キッカーの意図的なダブルタッチ、ボールが後方に蹴られる、不正なフェイント、特定されていないキッカー、キッカーによる反スポーツ的行為を除く。
※PK時のキッカーによるダブルタッチ(キッカーが他の選手に触れる前に、ボールに連続して2回以上触れる)した後、ゴールすれば、それが偶発的と判断されれば再び行われ、意図的であれば得点を認めず相手チームの間接フリーキックで再開される。ゴールしなければ、間接フリーキックで再開される。
★同時に反則を行ったのに、キッカーに警告するのは厳しすぎると考えたのでしょう。攻撃側の選手の警告を軽減したいのではと思います。
9.アクセサリーは、危険でない場合に限り認められる
選手は危険な用具、もしくはその他の物を用いる、または身につけてはいけない。(第4条 競技者の用具)
装身具という言葉を使わず、アクセサリーは、危険でなく、安全に、確実に覆われている場合に限り認められる。突起のあるような危険なアクセサリーは外さなければならず、テープで巻いたり、他の物で覆ったりしてはならない。
★装身具(jewelry)という用語の解釈に混乱を招き、一貫性を欠いた適用となっていたらしく、また、特定の物を身につける文化的、宗教的、医療的個人的な理由が十分に考慮されていなかったという理由です。審判員は、これまで通り、試合前に選手、交代要員に対して、競技のフィールドに入る前に検査しなければなりません。たとえば、ミサンガはアームバンドなどで安全に確実に覆われているならばOKです。
10.VARの拡大適用
VARがレビューできる事象の追加(第5条 主審)
・明らかに間違った2枚目の警告による誤った退場に対して。
・選手に警告または退場が示されたものの、そのカードの対象となった反則がいずれかのチームの別の選手によって行われていた場合。
・明らかに間違って与えられたコーナーキックを、すみやかに、そして再開を遅らせることなく変更できる。

以上、「試合の価値を高め、サッカーの魅力をより増やすこと」を目的に今回の改正が行われていますが、審判員はこの目的を実現し、ゲームを円滑に進めるために、これまで以上にさまざまなタイムマネジメントをすることが求められます。
審判無線のない、また第4、5審判員がいないことも多いグラスルーツサッカーでは、選手・チーム役員、本部役員の皆さんの協力が必要だと思います。審判員は「できて当たり前、普通」という概念に果敢に挑戦してもらいたいです。