成長するために休む ― ジュニアサッカーに励む息子と我が家が大切にする「もっとやりたい」という気持ち
テキサスのサカパパ、japa-ricanです!
10月に入り、長かったテキサスの夏もようやく終わりに近づいてきました。先週末は、3カ月ぶりにまとまった雨が降り、予定されていたリーグ戦も延期に。思いがけず「サッカーのない週末」となりました。
皆さんは、急に訪れたオフの日をどう過ごされますか?
私たちの住むダラスは、全米でもサッカー熱の高い地域の一つ。チーム練習に加えて、パーソナルトレーニングやカップ戦、フットサルなど、年間を通してジュニア年代からほぼ休みなくサッカーを続ける子どもたちも珍しくありません。
先週末も、試合が延期になったことで、チームメートの中には急遽、室内や人工芝のフィールドでトレーニングを入れたり、別のチームにゲスト参加したりする子どもたちがいました。
もちろん、たくさんボールを蹴ることを否定するつもりはありません。それぞれの家庭に、それぞれの考え方があります。
ただ、我が家には、ずっと大切にしている考えがあります。
それは、「成長するためにしっかり休む」ことです。
今回は、そんな超多忙なアメリカのジュニアサッカーの中で、我が家が実践している「休む」という取り組みについて書いてみたいと思います。
「もっとやらせる」より「もっとやりたい」を残す
私自身、ジュニア年代のサッカーでは、とにかく練習量が大切だと考えていた時期があります。今のうちにできるだけボールに触らせたほうがいい。周りの子がやっているなら、自分の子もやらせなければ。チーム練習だけでは足りないのではないか。そんな焦りを感じることもありました。
そして、これは決してアメリカだけの話ではないようです。
日本でも、複数のサッカースクールを掛け持ちしたり、チーム練習の前後に自主練をしたり、睡眠時間を削って早朝からボールを蹴ったりする話を耳にします。
「もっとやらせたほうが上手くなる」。その気持ちは、サッカーを愛する親であれば、誰もが一度は抱くものではないでしょうか。しかし、私は自分自身のサッカー経験から、少し違った視点を持つようになりました。
サッカー選手として勝負をかけるべき時期は、ジュニア年代の今ではありません。むしろ、15〜17歳頃になったときに、土台となる「実戦で使える基礎技術」が身についていること。そして、高い強度でサッカーを続けられる身体と心を持っていることが大切なのだと、プロサッカー選手になる夢を追いかけていた自分自身の経験から強く感じています。
だからこそ、10歳前後の今は、技術を伸ばすことだけに目を奪われず、より高みを目指したいという気持ちをしっかり持ち続けること。そして、身体そのものを成長させることも、同じくらい大切だと考えています。
ジュニア期には、とにかく、たくさん食べる。たくさん寝る。そして、しっかり休む。これもまた、ジュニア期の重要なトレーニングの一つなのだと、私と息子は少しずつ理解できるようになりました。

休むことで、「もっとやりたい」が生まれる
私が休むことを大切にしているもう一つの理由は、サッカーを心から楽しみ続けてほしいからです。
「俺、サッカーが大好きで、したくてたまらない」。
息子には、そんな気持ちをできるだけ長く持ち続けてほしいと思っています。いつか本気で勝負をかけるときが来たら、心身ともに「もっと高みを目指したい」と思える状態でなければ、夢は夢のままで終わってしまいます。そのためにも、今からしっかりと「サッカーから離れる時間」を持つことが必要だと考えています。
私は息子が小さい頃から、サッカーを大好きになってほしいと願う一方で、サッカーを忘れてしまうほど夢中になれることも見つけてほしいと思っていました。
そして今では、オフの日の過ごし方も、少しずつ息子のスタイルとして確立されてきました。
まずは折り紙。前回のコラムでご紹介したように、10歳のジャパニーズアメリカンは折り紙に夢中なんです(笑)。最近では、巨大な折り紙に挑戦したり、逆に小さな紙をいくつもつなぎ合わせて作品にしてみたり。

私の想像をはるかに超える発想で、次々と作品を生み出しています。どうやら、私には見えていない世界が、息子には見えているようです。

そして、次に大好きなのが読書です。妻が毎週のように図書館へ連れて行き、30冊ほどの本を借りてきます。

最近の一番のお気に入りは、『The Academy』という本。主人公のLeoというアメリカの少年が、イギリスのプロクラブチームのアカデミーに挑戦し、夢を切り開いていくストーリーです。息子は、そんなLeoの姿を自分自身に重ねながら、夢中になって読んでいます。

そして、私の予定が合えば、一緒に釣りに出かけます。近所の池でブラックバスやブルーギルを狙うのは、もう一人でできるようになりました。

他にも、DIYで工具の使い方を覚えてみたり、日本にいる従兄妹からもらったLaQで遊んだり、ルービックキューブを解いたり、チェスをしたり、姉妹と庭で遊んだり。

もう少し寒くなれば、裏庭の掃除を兼ねて落ち葉拾いを手伝ってもらい、その後は焚き火を囲んでマシュマロを焼き、チョコレートとビスケットで挟んだ「S’more」というデザートを楽しむのが、毎年の楽しみです。

こうして振り返ってみると、サッカーのない時間にも、息子には夢中になれることがたくさんあります。
長期休みやオフの日には、積極的にサッカーとは関係のない時間を過ごし、身体だけでなく気持ちもリセットします。すると不思議なことに、オフ明けには「早く練習に行きたい」という気持ちが目に見えて戻ってきます。
練習に行くのが待ちきれないような様子でグラウンドに向かい、ピッチに入れば、まるで水を得た魚のように走り回る。ボールを追いかけ、奪われれば猛追し、また奪い返す。休んだ分、エネルギーが一気に解放されるような、強度の高いプレーを見せることもあります。
私は、これこそが「休むこと」の大きな意味の一つだと思っています。
アメリカでよく耳にする「We want to keep him busy.」
アメリカのサッカー現場で、親からよく聞く言葉があります。
“We want to keep him busy.”「子どもを忙しくさせておきたい」という意味です。
もちろん、悪い意味ではありません。子どもが悪い仲間とつるまないように。ゲームやスマホばかりしないように。暇な時間を持て余さないように。そして、できるだけ良い環境を与えてあげたい。親としては、ごく自然な気持ちだと思います。
ただ、その中に、いつの間にか別の感情が入り込んでしまうこともあるのではないでしょうか。
SNSを開けば、誰かが毎日トレーニングしている。
「うちの子もやらなければ、置いていかれるのではないか」という不安。
「こんなにやっているのだから、うちの子は他の子より頑張っている」という優越感。
あるいは、「これだけやらせています」とコーチにアピールしたい気持ち。
じつは、私自身もこうした感情に襲われることがあります。そして、正直に言えば、その不安や焦りに屈してしまったこともあります。だからこそ、これは他の家庭に対する批判ではなく、自分自身への戒めでもあります。
子どもの成長を願う気持ちが強いからこそ、親は「何かをさせてあげなければ」と思ってしまう。でも、時には「何もしないことをさせてあげる」ことも、親の大切な役割なのかもしれません。
「休む」ことも成長の一部
サッカーが上手くなるためには、練習が必要です。これは間違いありません。ただ、成長に必要なのは、練習だけではありません。
トレーニングによって刺激を受けた身体が回復すること。十分な睡眠を取ること。たくさん食べて、成長に必要な栄養を摂ること。サッカー以外のことを経験すること。そして、また「サッカーがしたい」と思える心を保つこと。それらもすべて、長いサッカー人生を支える大切な要素です。
ゴールデンエイジと呼ばれる9〜12歳頃は、運動能力の発達が著しく、ボールを扱う技術も目に見えて向上していきます。だからこそ、親としては「今しかない」と思ってしまいます。でも私は、ゴールデンエイジだからこそ、休むことまで削ってトレーニング漬けにする必要はないと考えるようになりました。
今の1回の練習を増やすことよりも、15歳、16歳、17歳になったときに、「まだサッカーが大好きだ。もっと上手くなりたい」と思える心身でいてくれること。そのために、今からしっかり休ませる。我が家では、それもまた「サッカーのためにしていること」の一つです。
雨で試合が延期になった先週末。息子は家の中で気の向くままにボールを蹴って遊び、大好きな折り紙と読書に没頭し、たくさん食べて、たくさん寝て過ごしました。
そして次の練習の日。
グラウンドに着いた息子は、いつものように「早く始まらないかな」と言わんばかりに車に飛び乗り、練習が始まれば満面の笑顔でチームメートたちとボールを追いかけていました。

そんな姿を見ると、私はあらためて思います。
「休ませてよかった」。
サッカーから離れる時間があるからこそ、またサッカーに戻りたくなる。「もっとやらせる」ことだけではなく、「もっとやりたい」という気持ちを残してあげること。それも、ジュニア年代の子どもたちが成長していくために、親ができる大切なサポートなのではないでしょうか。