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FC多摩

【「J」に迫る強豪街クラブの中学育成論】FC多摩ジュニアユース・平林清志監督(第3回)

関川郁万(鹿島)等を生んだ“ディフェンス論”
“エフたま式”指導の内容とは!?

中学年代は成長過程において、非常に繊細で多感な時期と言われています。長年、この世代の成長を見守ってきた指導者たちは、どのように選手にアプローチし、どのような育成論を持って接してきたのでしょうか?

今回お話しを伺ったのは、東京都を代表する街クラブの強豪「FC多摩ジュニアユース」の平林清志監督です。昨年度の高校サッカー選手権で準優勝した流通経済大柏高校で注目を集め、鹿島アントラーズに入団したDF関川郁万選手、今年4月の第57回デュッセルドルフ国際ユース大会で、日本高校選抜としてストライカー賞に選出されたFW宮崎純真選手(山梨学院高校卒)など、有望選手を次々と高校サッカー界に輩出してきた中学年代の育成スペシャリストです。今年は関東リーグに名を連ね、街クラブにして、Jリーグクラブのアカデミーに匹敵する強さにまでクラブを育て上げました。前回は平林監督が考える中学年代の育成ポイントについて紹介してきましたが、今回は昨年度の高校サッカー界で大活躍した選手たちの中学時代の取り組みについて聞いてきました。

2018年度の高校サッカー界はFC多摩OB選手が席巻

2018年度の高校サッカー界は、鹿島アントラーズのDF関川郁万選手(流通経済大柏)、ヴァンフォーレ甲府のFW宮崎純真選手(山梨学院)、インターハイ準優勝の桐光学園の主将DF望月駿介選手をはじめ、同高のDF内田拓寿選手、MF阿部龍聖選手など、FC多摩OB選手が席巻した1年でした。

「彼らが評価されたのは、泥臭くがんばるからじゃないですか。それは中学生も、高校生も、小学生だって一緒だと思いますよ。『プロになりたい』という夢を持っているなら、今を泥臭くがんばらないと。そうじゃないと“夢を見られる選手にはなれないよ”と言っています。頑張ることに恥ずかしがる必要なんてないんですよ。サッカーに対してがむしゃらになることは、育成年代において非常に大事なことだと思います」

関川郁万
昨年度の高校サッカー選手権で流通経済大柏を準Vまで引っ張ったDF関川郁万(現・鹿島アントラーズ)。
同年代では次元の違う空中戦の強さを見せた。

空中戦にめっぽう強いDF関川選手は「“エフたま時代”にヘディングを学んだ」と言っていました。

「ヘディングは極論で言うと、テクニックとは違います。タイミングが重要で、ボールの落下地点を見つける“判断力”を養うことが重要です。関川にしても望月にしても、自分が持っている各々のタイミングというものがあります。あの2人はよく一緒に練習していて、2人でいいところを見合って、自分のものにしていました。周りもそれに刺激を受けて上手くなっていったと記憶しています。そうして、ヘディングの上手い選手が後輩に教えていくという変な伝統みたいになっていますけどね(笑)。誰でもというわけではありませんが、練習すればヘディングは上手くなれると選手たちには言っています」

望月駿介
高校サッカーでは関川とライバル関係にあった桐光学園のDF望月駿介。名門校で1年生からレギュラーとして活躍し選手権にも出場。3年次には主将としてチームのインターハイ準Vに貢献した。

彼らはサッカーに対して中学時代から真剣に向き合っていたということですね。

「そうですね。中学年代はディフェンスが不得意な選手が、比較的多いと思います。小学生でも攻撃の方が得意な選手が多いのではないでしょうか。ただ、中学生の高学年にもなって、『攻撃は好き、守備は嫌い、だからやらない』では伸びません。嫌なことを覚えないと、オフェンス面でも活きないことは、常に選手たちに教えています。ディフェンスが下手な子は、攻撃も上手くなりません」

山梨学院高校をインターハイ初優勝に導いたFW宮崎選手は、守備面での貢献も評価されている選手ですね。

「彼は中3の時からすでにドリブルからのシュートという確固たる武器を持っていました。ただし、前からの守備という部分ではできていない印象がありました。後ろにいる選手を助けるために、前からのプレスの重要性を、彼はちゃんと理解してくれました。今でこそあれだけの運動量で守備にも貢献していますが、しっかりと守備に取り組み始めたのは3年生になってからです。前での運動量を増やしていき、FWでありながら、苦手な守備もできるようになっていったのです。山梨学院で評価されたのも、シュート・決定力という武器を持っていたことはありますが、守備面での貢献も大きかったのではないでしょうか」

宮崎純真
(C)Taro Yoshida
FW宮崎純真(現・ヴァンフォーレ甲府)も山梨学院1年次から選手権に出場。3年次にはチーム初となるインターハイ優勝の立役者となった。

彼らとは一つ上の代になりますが、桐光学園の主将を務めた田中雄大選手(早稲田大学)の中盤での運動量もすさまじいものがありました。

「あの子も中1の頃は背が小さくて、ずっとレギュラーだったかといえば、そうではないんです。ウチでは中1で基礎を徹底的に指導しますが、中3になると、1vs1などDFのトレーニングを全員が見つけ直す機会を与えています。そうした時に雄大はDFの立場になって考えることで『守備の選手はこれをされたらイヤなんだ』という感覚を覚えたんでしょう。そこからガラっと変わり、中3で化け物みたいな選手になりました。とにかく頭がいい選手でした」

立場を変えてみることで、今まででは気づけなった視点、景色が見えてくると。

「そうです。前線の選手もオフェンスだけでなく、ディフェンスをやり、逆の立場になることで見えてくることがある。そうなると相手の逆を付けるようになるんですよ。あいつはそこが上手かった。相手の嫌なことを自分の力に代えて、中盤をコントロールできるようになりました」

田中雄大
現在は早稲田大学で活躍する田中雄大は、神奈川の名門・桐光学園で主将を務めた。平林監督いわく、「中3で才能を開花させた」選手の一人だ。

平林監督は教え子たちが毎年のように選手権に出場していますが、観戦には行かれるのですか?

「選手に呼ばれるから毎年見に行きますよ。正月は1年間で唯一休める時期なんだけどね(笑)。だから365日、休むことなく子どもたちを見ています。指導方針についてはお話ししましたが、選手一人ひとりを見る・把握するという方針は絶対に変えないようにしています。その部分を抜き取ったらウチのチームは強くならないです。“どれだけサッカーができるか”じゃなくて、“どれだけ子どもたちが気持ちよくサッカーをやってるか”っていうことが一番大事。そのような雰囲気の中でやっていれば、自然と子どもは上手くなっていくものです。ウチではすごく走ったり、厳しいトレーニングをすることはありません。練習メニューの中でいかに走らすか、心拍数を上げるトレーニングをしたほうが、サッカーで大事な筋肉を身につけられます。その方が断然効率がいいですからね」

FC多摩
平林監督は、チームの育成として最も大事にしているのが「選手がどれだけ気持ちよくサッカーができているか」だという。

インタビュー第4回はこちら セレクションで“光る選手”は、〇〇が強い選手!?

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