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今さら聞けない!?サッカールール「審判員のシグナル(副審編)」

1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
今回は「審判員のシグナル」について。試合中に審判員は手や旗を用いて様々な合図を送っています。今回は、前編として副審のシグナルについてまとめました。

今回のテーマは「副審のシグナル」

コーナーキックキックから攻撃側選手のシュートしたボールがクロスバーに当たりフィールドに落ち、守備側選手がそれをクリアしました。クロスバーに当たったボールがゴールラインを越えていたかどうか非常に際どい場面だったとき、得点かどうかを皆さんはどのように確かめますか?

選手のリアクションや表情、サポーターの歓声など、いろいろな確認方法がありますが、この場面で最も注目されるのはゴールラインに近い副審でしょう。副審はボールがアウトオブプレーになったことを示すために、旗を真上に上げるという合図を行っています。
今回取り上げるのは、この「シグナル」についてです。「シグナル」とは、主審またはその他の審判員が行う身体的な合図のことで、手や腕、もしくは旗を動かして、主審であれば笛を用いて行うものです。中でも今回は、副審のシグナルについて見ていきます。

副審がシグナルをする場面は?

 

副審がシグナルをする(旗を上げる)のはどんなときでしょう? 2021/22の競技規則によれば、副審は次のときに旗を上げて合図を送ります。

  • ボール全体が競技のフィールドの外に出たとき。
    ➡どちらのチームがコーナーキック、ゴールキックまたはスローインを行うのか、プレーを再開するチームの方に旗を上げます。
  • オフサイドポジションにいる選手が罰せられるとき。
  • 選手の交代が要求されているとき。
  • ペナルティーキックのとき。
    ➡ボールがゴールラインを越えたときに旗を上げます。また、ボールがけられる前にゴールキーパーがゴールラインを離れた場合も旗を上げます。

以上の4つの場面では、副審が主審にシグナルを送り、主審はそれをもとに判断をします。ほとんどの場合、主審は副審のシグナルを採用しますが、副審よりその状況を的確に判断できる場合はシグナルを採用せず、主審自らが決定を下すこともあります。
例えば、競り合いの中でボールがタッチラインを割ったとき、副審よりも主審の方がどちらが最後にボールに触れていたかはっきり見えているような場合は、主審が先に笛を吹いて判定を下し、副審がそれに合わせることもあります。

また、この他にも主審が副審のシグナルを採用しないケースには、アドバンテージを適用しているという場合があります。
例えば、オフサイドがあって副審が旗を上げたが、守備側のゴールキーパーがボールをキャッチして味方選手にスローしていた場合などは、アドバンテージを適用して副審のシグナルを採用せずにそのままプレーを続行させることがあります。

アドバンテージについてはこちら

ファウルサポート

先ほどの4つの場面以外でも、副審の間近や主審の見えないところでファウルまたは不正行為が起きたときには、副審は旗を上げ、横に小さく振らなければなりません。この場合、副審は何を見たのか、聞いたのか、どの選手が関わったのかを主審に伝えます。そして、シグナルするときに用いる手と同じ手で旗を上げることにより、主審にどちらのチームにフリーキックを与えるのかを示すことになっています。これは、ファウルサポートと呼ばれているものです。

副審に求められるテクニックとは?

 

「旗を上げる」と一口に言っても、実は細かなフラッグテクニックがあります。副審はシグナルをする際に、次のようなテクニックを使っています。

  • 通常、旗は主審に近い方の左手で持ちます。
  • 旗は常に広げた状態で主審に見えるようにします。
  • シグナルをするとき、副審は立ち止まって、競技のフィールドに面し、主審を目で確認(アイコンタクト)して、急がず、過度にならないように落ち着いて旗を上げます。(この旗を上げるタイミングが判定の説得力や審判員のチームワークにつながります)
  • 伸ばした腕の延長のようになるように旗を上げます。(明快さにつながります)
  • オフサイド、スローイン、ゴールキック、コーナーキックなど必要と思われるときに一方の手から他方の手へ旗の持ち替えをし、持ち替えによって主審に情報を送ります。オフサイド、ゴールキック、コーナーキックに関しては右手に持ち替えることで競技のフィールドを見る視野を広げます。
  • 状況が変わり、もう一方の手を使わなければならなくなった場合(主審の判断に合わせるなど)、副審は腰より低い位置で反対の手に旗を持ち替えます。

尚、副審はボールがアウトオブプレーになったときなど、基本的には主審が気づくまで旗を上げ続けてシグナルを送らなければいけませんが、ゴールラインを明らかに越えたときや、ゴールキックかコーナーキックかの判定がはっきりしている場合にはシグナルををする必要はありません。

ウェイトアンドシー

これらのテクニックに加えて、さらに副審には「ウェイトアンドシー:Wait&See(多少待って、様子をうかがう)」のテクニックも求められています。これは、主にオフサイドの反則の場面で用いるもので、主審が選手にプレーを続けさせ、反則されたチームがアドバンテージの適用により利益を得た場合、旗を上げずにしばらく待つことを言います。この場合、副審は主審のアドバンテージのシグナルやジェスチャー・表情・態度などを目で確認することが重要です。

副審の働きでより質の高いゲームが作られる

ラインズマン(線審)からアシスタントレフェリー(副審)と呼ばれ長い年月が経ち、副審に求められることも増えてきました。そして、その役割の重要度も増しているように感じます。一本の旗による副審のシグナルによって主審が正しい情報を得て、より質の高いゲームを選手と一緒に作ることができれば最善でしょう。観客の皆さんも、副審のシグナルに注目してゲームを観ると新しい発見があるかもしれませんね。

 

アンケート

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WRITER PROFILE

小幡 真一郎
小幡 真一郎

1952年7月21日生まれ、京都府出身。元国際主審。
サッカーの競技規則の側面から、サッカーの持つ魅力、またはサッカーそのもののを伝えたいと思います。著書に7月21日発売『おぼえよう サッカーのルール』(ベースボールマガジン社)、『すぐに試合で役に立つ! サッカーのルール・審判の基本』(実業之日本社)、『失敗から学ぶサッカー審判の教科書 しくじり審判』(カンゼン)がある。