世界が恋した20歳。ルーカス・ベリバル、その才能を育てたもの
サカママ視点

世界が恋した20歳。ルーカス・ベリバル、その才能を育てたもの

家族に支えられ、育成の名門クラブで才能を磨き、世界最高峰の舞台へ。ワールドカップで話題になった20歳の裏側には、努力を積み重ねてきた日々がありました。

イケメンだけじゃない。努力を積み重ねた20歳

日本代表のグループリーグ第3戦。スウェーデン代表のベンチから途中出場すると、「あのイケメンは誰!?」とSNSで一躍話題になった選手がいました。名前はルーカス・ベリバル。もちろん、話題になったのはルックスだけではありません。中盤での落ち着いたボールさばきや積極的なプレッシングで流れを変え、世界中にその才能を印象づけました。

同グループリーグのスウェーデン対チュニジア戦では、途中出場ながら持ち前のハイプレスでボールを奪い、その流れからチーム5点目を演出。さらにこの試合で、ベリバル選手は20歳132日で同国史上最年少のワールドカップ出場記録を更新。本人は気に留める様子もなく「記録のことは知らなかった」と話していましたが、子どもの頃から夢見てきたワールドカップの舞台に立った瞬間でもありました。

「あの子は特別だ」9歳で周囲を驚かせた才能

もっとも、突然現れたスターではありません。ベリバル選手が育成年代に所属していたIFブロマポイカルナは、スウェーデン代表選手を数多く輩出してきた“育成の名門”として知られています。現在の代表チームにも、このクラブ出身の選手が複数名在籍しており、ベリバル選手もその一人です。

そんな環境で育ったベリバル選手について、幼少期から指導したコーチのピーター・キシュファルディ氏は英紙『The Sun』のインタビューで、「最初の練習を見た瞬間、この子は特別だと思った」と振り返っています。これまで多くのスウェーデン代表選手を育ててきた指導者ですが、「純粋な才能ではルーカスが一番」と高く評価していたといいます。

彼が秀でていたのは、足元の技術だけではありません。周囲を見渡す視野や、一歩先を読む判断力、そしてサッカーIQ(試合中の刻々と変化する状況を瞬時に把握し、最適なプレーを選択・実行する能力)の高さ。「常に次のプレーを考えていた」と恩師は話しています。

しかし、ベリバル選手の本当の強みは、それだけではありませんでした。練習が終わっても一人でボールを蹴り続け、「もっと上手くなりたい」と自主練習を繰り返す毎日。その向上心や努力を間近で見てきたからこそ、「ケガさえなければ世界最高レベルの選手になれる」と、キシュファルディ氏は大きな期待を寄せています。

幼い頃から勝敗だけを追い求めるのではなく、一人ひとりの成長を大切にする環境で、じっくりと才能を伸ばしてきたベリバル選手。一方で、キシュファルディ氏は「彼の成長を後押ししたのは、クラブの指導者だけではなかった」とも振り返ります。サッカーを理解し、長い目で成長を見守る家族の存在も、彼を世界へ押し上げた大きな理由のひとつだったそうです。

彼を輝かせた、家族のサポート

ベリバル選手は、まさに“フットボール一家”で育ちました。父はセミプロとしてプレーし、母はスウェーデン女子トップリーグで活躍した元選手。祖母も48歳までゴールキーパーを務め、兄はスイス1部リーグでプレーするプロサッカー選手、弟も将来を期待される育成年代の選手です。

キシュファルディ氏によると、ベリバル選手の家族はクラブとも密にコミュニケーションを取りながら、本人が成長できる環境を第一に考えてサポートを続けていたそうです。チームの移籍など環境選びにおいても、その考え方は変わりませんでした。

サッカーが特別なものではなく、いつも家族のそばにある——そんな環境で育ったベリバル選手。だからといって、「サッカーをやりなさい」と厳しく育てられたわけではありません。家族みんながサッカーを楽しみ、その楽しさを自然と共有する毎日が、彼が世界最高峰へたどり着くまでの原点になりました。

輝く結果より、積み重ねてきた時間

20歳にして世界中から注目を集めるベリバル選手ですが、夢の舞台は、決して当たり前に手にしたものではありませんでした。ワールドカップまで半年を切った2026年1月には足首を負傷し、大会出場も危ぶまれました。それでも懸命なリハビリを続け、再びピッチへ。苦しい時間を乗り越え、憧れてきたワールドカップのピッチに立ちました。

「子どもの頃からの夢だったワールドカップに出場できた」

スウェーデン国営放送『SVT』のインタビューで、ベリバル選手は開口一番、その喜びを語っています。史上最年少出場という記録に注目が集まるなか、本人が口にしたのは、幼い頃から追いかけ続けてきた夢の実現についてでした。

世界中がまず目を奪われたのは、そのルックスだったかもしれません。でも、その裏には、家族に支えられ、努力を積み重ね、自分に合った環境を選びながら成長を続ける、一人の20歳の物語がありました。

ワールドカップをきっかけに、きっとこれから何度もその名前を耳にするはずです。今からその成長を追いかけてみるのも、この大会の楽しみ方のひとつかもしれません。

出典

『The Sun』 TOTT TALENT Inside making of Spurs whiz Bergvall who outshone Kulusevski & Gyokeres as kid and left coach saying ‘s*** he’s special’ 

『SVT Sport』 Lucas Bergvall yngste svenske VM-spelare genom tiderna

写真/Getty Images