
40歳の英雄。ボジーニャが島国にもたらした奇跡
25歳でプロになり、各国のクラブを渡り歩いてきた40歳。人口50万人の島国カーボベルデを背負い、世界の強豪を相手に立ちはだかりました。挑戦を諦めなかった守護神の物語を紹介します。
人口50万人の小さな国に世界を熱狂
人口およそ50万人の島国、カーボベルデを支えた守護神ボジーニャ選手に世界の注目が集まりました。初出場の今大会、優勝候補スペインの猛攻を無失点に抑えてグループステージ突破に導くと、決勝トーナメントでは前回王者アルゼンチンをあと一歩まで追い詰めます。強豪を相手に次々とビッグセーブを重ねる姿に、世界中が熱狂しました。
その熱狂は、数字にもはっきりと表れました。大会前、ボジーニャ選手のインスタグラムのフォロワーはおよそ5万人。それが初戦のスペイン戦から24時間もたたないうちに、なんと約500万人に。快進撃とともに増え続け、アルゼンチン戦を終えたころには、1800万人を超えていました。つい先日まで無名に近かったベテランGKが、たった数試合で「時の人」となったのです。
25歳でプロになった遅咲きの守護神
本名はジョジマール・ジョゼ・エボラ・ディアス。FIFA公式サイトのインタビューによると、「ボジーニャ」は彼を育ててくれた祖父母がつけた愛称だといいます。父は軍人、母は仕事で家を離れることが多く、幼い彼は祖父母のもとで育ちました。ポルトガル語で「おばあちゃん子」を意味するこの愛称は、そんな生い立ちから生まれたものでした。
カーボベルデはアフリカ大陸の北西沖、大西洋に浮かぶ人口およそ50万人(都道府県で一番人口の少ない鳥取県と同じ)の小さな島国です。彼のサッカー人生は、故郷サン・ビセンテ島の地元クラブで始まり、プロとして本格的にキャリアを歩み始めたのは25歳のときでした。アンゴラ、モルドバ、ポルトガル、キプロス、スロバキアと、各国のクラブを渡り歩き、華やかなビッグクラブとは無縁のキャリアでした。それでもゴールを守り続けた先に、40歳で初めてのワールドカップという大舞台が待っていたのです。

敗れてなお前を向く、誇り高き英雄
決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン戦は、まさに死闘でした。前回王者を相手に、カーボベルデは2度も追いつく粘りを見せ、試合は延長戦へ。ボジーニャ選手はこの日も8本ものシュートを止め、メッシ選手の鋭いシュートさえはね返します。最後は終盤の失点で2-3と力尽きましたが、90分間で一度も負けなかったこの大会の戦いぶりは、見る人の胸を打ちました。あと一歩が及ばず、うなだれる仲間たちに「顔を上げろ」と声をかけてまわったボジーニャ選手は試合後、こう語っています。
「現世界王者と対等に戦い、勝つチャンスもありました。試合には敗れましたが、我々は誇りに思うべきです。もちろん、ここで終わってしまうのは悲しいですが、仲間やスタッフ、協会、そして応援してくれたすべての人に感謝します」

世界から熱視線。挑戦の日々はこれからも続く
25歳でプロになり、ようやくたどり着いた大舞台。じつはボジーニャ選手、この大会の直前にそれまで所属していたポルトガルのクラブとの契約が満了し、どこにも所属しないフリーの立場で本大会に臨んでいました。背水の陣ともいえる状況で手にした、今大会での大活躍。海外の報道によれば、いまや世界中のクラブがこの40歳の守護神に注目しているといいます。長い旅路でつかんだ大きな夢を胸に、ボジーニャ選手の挑戦はまだまだ続きそうです。
出典
『Olympics.com』 FIFA World Cup 2026: Who is Vozinha? Meet the ‘Voice’ of Cabo Verde’s national team
写真/Getty Images