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岡崎慎司が伝えたいこと 「MEISTER PRESS」Vol.1 神戸への想い

今回から始まった「MEISTER PRESS」。この連載では、岡崎慎司選手が、子どもたち、そしてサカママに伝えたい思いを綴ります。第1 回目は、Meister Soccer School について、なぜ神戸で子どもたちの指導を行おうと思ったのか、本音を語ってくれました。

滝川第二高校で育ててもらったから神戸に恩返しがしたかった

誰のためでもない、自分のためにみんなを助ける

子どもたちに伝えられることはないだろうか――。僕がそう思うようになったのは、幸運にも日本代表に選ばれ、子どもたちから応援してもらうようになってからです。そんな思いを抱きながらドイツでの生活を積み重ねていく中で感じたのは、クラブチームの子どもたちと地域とのつながり。サッカー選手として、子どもたちと一緒に地域を盛り上げ、社会に貢献していきたいという思いが次第に強くなっていきました。同時にドイツで僕自身が大きく変わったことがあります。あるときチームメイトに言われて驚いたのが「慎司が試合で守備をするのは、やりたいからだと思ってたよ」という一言。僕がチームのためにと思っていたプレーも、ドイツ人にはそうは見えていなかったのです。ドイツでは、やりたいことをやればいいというのが基本。ただし、みんな強い精神と自分がやるべきだと思ったことに自信をもってプレーしている。彼らを見て感じたのは、僕はずっとチームみんなのためにという思いでプレーしていたけれど、それは単なるエゴでしかなかったんだと。誰のためでもなく、自分のためにみんなを助け、それを認めてもらおう。そう思うようになってから、試合でも動けるようになっていきました。以来「自分のためにみんなを助け、結果を出すこと」が僕自身のやるべきことであり、自信をもって貫こうと思っています。

多くを学び、育ててもらった滝二のグラウンドからの出発

現役の今だからこそ海外や日本代表で感じていること、経験していることを子どもたちにいち早く伝え、子どもたちの未来につなげたいと漠然と思っていたけれど、ドイツで学んだことで「今こそやらなあかん」、僕自身の考えも貫いていこうと思うようになりました。

僕がこれまでのサッカー人生の中で育てられたと思う地は、他でもない神戸、滝川第二高校で過ごした3年間です。一番泣いたし、感情をあらわにしたし、そして何より掛け替えのない人たちとの出会いもあった。ここで育ててもらったからプロに近づくことができ、今があると思っています。だからこそ僕には「神戸に恩返しがしたい」という思いが強くありました。僕の経験や思いをサッカースクールを通して子どもたちに伝えたといと思ったとき、パーソナル トレーナーである杉本龍勇さんや元清水エスパルストップチームコーチの宇野陽さんが背中を押してくれた。そして、嬉しいことに高校の同級生である岡良一(株式会社Meister 代表)が僕の右腕となってくれることになったのです。ならば、スタートするなら神戸、僕たちが多くを学ばせてもらった滝二のグラウンドから始めようと決めました。

神戸の子どもたちと一緒に地域を盛り上げていきたい

スクールを立ち上げるにあたり、僕がやるべきだと思ったのは、サッカーを通して、人間力を育てるということ。子どもたちには、プロになることや夢を叶えることだけではなく、人間的に生きていく力を身につけてほしい。そう思ったのは、高校時代のサッカー部の顧問であり監督を務めていた黒田先生から「サッカー=人間性」だと教わったことが、サッカー選手として成長した近道になっていると感じているからです。

また、黒田先生に幾度となくかけてもらった言葉「ひるまず・おごらず・はつらつと」。このフレーズが、人間的な指導をするうえで、ぴったりとあてはまるんです。子どもがひるんでたら勇気を与えてあげればいいし、おごってたら鼻っ柱を折ればいい、はつらつとしてなかったら元気づければいい。この言葉をかけ続ければ、子どもたちの人間性をきっと磨くことができるだろうと思っています。スクール名であるMeisterとは、その道を極めるという意味です。生徒たちはもちろん、指導する側も極めていくという意味を込めています。指導者が成長し続けることも、子どもたちの人間育成につながっていくと思うのです。

Meister Soccer School は開校して1年を迎えようとしています。龍勇さんをはじめとする僕が信頼をおいている方のメソッドや僕自身の経験を軸に、コーチ陣も全力で指導しています。けれど、普通のサッカースクールでは、僕が立ち上げた意味がない。生徒を育て、少しずつでもいいから神戸に貢献していく。そして、地域とつながり、自分たちの生徒だけでなく、地域の子どもたちみんなと一緒になって、神戸を盛り上げていくのが目標だからです。

また、スクールがきっかけとなり、滝二に進学し、そこからプロの選手へとつながればとも思っています。

Meister Soccer School は僕のサッカー人生と同じ。決して今に満足しない。これからずっと進化し続けていきます。

※この記事は過去に読者のみなさまから反響の多かった記事を厳選し再録したものです。(2016年5月1日掲載)